第19章 宴
消そうとしていた最後の火、その火の粉が飛んでくる。風が髪を揺らす。
そんな最中、僕は両親に庇われた。
何度も夢で見た、ケイトに庇われた当時にもよぎったフラッシュバック…
その光景を見て我先にと逃げる同族、それに絶望した。
初めて、両親が『希望』として映った。
母『無事で、よかった…ディムナ』微笑
ディムナ『ぁ…っ』ぼろぼろ
何故決め付けてしまったのだろう。
何故、嫌って唾棄してしまったのだろう。
どうして…もっと、ちゃんと話し合わなかったんだろう――?
最期まで愛し気な眼差しを送る両親は、僕の目の前で死んでいった。
冷たくなっていく中、涙が溢れて零れ落ちていく。
今更親のそれに報いようにも遅い。遅過ぎた。
『絶望』、『希望』、自分の愚かさを憎んだ、護れなかった自分の無力さを悔いた。
様々な思いが一度にいっぺんによぎり、頭の中がパンクする。
ディムナ『うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!』
やり直したい。やり直せない。
二度と、戻らない。一度過ぎた時間は、二度と戻りはしない。
何も返せない。返せていない。
両親までをも唾棄してしまった、今までの自分を呪った。
走った。走って走って…走り続けた。
泣いて泣いて、泣き叫び続けた。
涙が涸れるその瞬間まで、抑えようのない感情のままに…
これが、初めての感情の発露だった。
だからこそ…今までに、他人が僕に対して身を挺して庇ったことが無かったからこそ……
その人が現れたことを身を持って知ったのは、あの時だった。
間違ってはいなかったと、強く感じた。
しかし…それと同時に、失いかけた。
アミッド『最悪の事態も、覚悟しておいて下さい』←542ページ参照
フィン『!!!』
その次の瞬間、全身に衝撃が走った。
治療の現場に立ち会う中、掛けられた言葉は死の宣告。
『君と出会えたことは運命だ。君こそが僕の人生の一筋の『僥倖』だ』と身を持って知った矢先、その日の内にも拘わらず迫る『死』の可能性。
一瞬で目の前が暗くなり、息をするのも忘れ、硬直した。
そして、激情のままに走り出し…辿り着き、叩き付けた。←542~544ページ参照
人生で二度目の涙の咆哮が、暗闇に響いた。