第19章 宴
フィン「ああして身を持って護られるまで…
惨めな同族とは違うと証明する気だった。フィアナのように立ち回ろうと躍起になっていた。
僕は…君がどうしても、両親と被さってしまう。
『無事で、よかった…ディムナ』
『ぁ…っ』ぼろぼろ
(ぎゅっ、拳を強く握り締める)
血を吐きながら母はそう言った。
僕へ手を伸ばしながら…安心したかのような笑みを浮かべて。
父は何も言わなかった。それでも同じように笑みを浮かべていた。
もっと…大切に……そう後悔しても、時間は戻ってくれない。
失ったものは決して返ってこないと…身を持って知った。
両親を殺したモンスターが大人に殺されるまで、冷たくなっていく両親を前に涙を流すしかできなかった。
知識だけでは、知恵だけではどうにもならない…『無力』を、強く味わった。
泣き叫んで、感情を吐露するしか…できなかった。
そしてそれは、人生の中で初めてのものだった。
君を守れず、泣き叫んだあれは…人生で二度目だ。←542~544ページ参照
治療院からの帰り道の時、同じように走って…泣いていた。
雨が降ったのが幸いしてか、目撃者はいなかった。
運命を感じた。
『ケイト』とは、小人族の言語で『希望』を意味する」
ケイト「ええ!?」←寝耳に水
フィン「やはり知らなかったか^^(くす)
革命があったからこそ、そう願って付けられたのだろうね。←551ページ参照
ロキと出会い、眷属となった14歳から、今の42歳までずっと探し続けていた。
君は…とてもよく似ている。…目の前で失った、両親に。特に母親に。
勝手に失望して、嫌って、同族の現状に絶望して…
最後の最後に、『光』となってありありと焼き付いた。
出会った同族の中で、両親以外に『勇気』を持つ者は現れなかった。
いや、君ほどではないが一人いた。リリルカ・アーデだったかな?
これが真相だ」
ケイト「あれ?交際を持ち掛けてないの?」
フィン「君ほどではないと言っただろう?
どちらを取るか、それは一目瞭然だ。僕は君を選んだ。
それにその彼女と出会ったのは3月1日。流石に出会ってすぐ交際を申し込む気はない。
人柄も知らないが、仲間を助ける為に必死に助けを求める勇気を示した。他人の為に身を挺する同族はいなかった。
その事実を伝えたかったから挙げただけに過ぎない」