第19章 宴
ケイト「…避けるのがうまくなった。
ただただ必死だった。触れるぐらいなら死にたいと、死ぬ思いで避けた。
避けて避けて避け続けて、その内に逸らすことも覚えて。
縦の動きは横に弱い、横の動きは縦に弱い。
力の向き、ベクトルにとって90度横側からだと簡単に逸らせると知った。
その次に知ったのが身体の構造だ。内に力は強く出せる。
左手で逸らすなら左足を軸に右足を後ろに引かせながら、右手で逸らすなら右足を軸に左足を後ろに引かせながら。
でもフェイントの場合もある。見極める力もまた必要だ。
防御だけは完璧に出来なきゃ意味がなかった。その為にも動き続けなきゃいけなかった。
殺されちゃそれまでだ。何も出来ない。一矢報いてさえもいない。
このまま終われるかって、死に物狂いでそのことだけ考えてた。
それで…気付いたら、ここまで対応できるようになってた。
見れば大体、次の動きがわかるぐらいまでには」
フィン「なるほどね…
皮肉なことに、君が強くなる為に必要なことだったというわけだ」
ケイト「うん…
だから、そういった意味でだけは感謝してる。
そういうことをされた側の人間の主観、経験は誰にでも味わえるものじゃない。
あいつらは、間違ってる。
はっきり言って、あいつらの取っている行動は人を死に貶め入れるようなことをして笑ってること。
それが…どうしても、正しいとは思えない。
人の命を、人生までをもなぶりものにして笑える神経がわからない。
だから…無抵抗という手段を取ることは変わらない。
それでも…そうされるからには、それ以上のものを掴み取ってやる。
人に謝れと強要して、主観の違いから言葉の暴力ばかり振りかける。
ちゃんちゃらおかしいよ…何が被害者だ。もっと謝らないといけないことを続けてるのはそいつらじゃんか。
もっとひどいことを人にし続けて、謝れって言って…何が謝れだよ、一番謝らないといけない人間が高笑いして…何様のつもりだよ!
これぐらいには…怒れるようにはなった」
フィン「僕自身は…不俱戴天の仇という思いを抱いているよ」
ケイト「私も同じ気持ちだ。許せる度量を飛び越え過ぎてる。
だけど、同じことをやっていいという理屈にはならない。
同じになる為に我慢しているわけじゃない。胸張って、天界で会いたい人がいるから頑張ってる」