第19章 宴
ケイト「え…まさかその時点から?」
フィン「ああ。君のことが気になっていたのは、その時からだ。
恩恵のある冒険者と、恩恵のない冒険者、それらは天と地ほどに違う。
例えるなら…ミミズが大昔にいたとされる恐竜に勝負を挑んで勝つぐらいの衝撃だ」
ケイト「なにそれ!?;」←おっかなびっくり
フィン「それぐらいに差があるという話だ。
Lv.1になるだけでも身体能力が遥かに違う。
腕力の向上、複数のモンスターの動きを同時に全て捉える動体視力、敵の爪牙を一切掠らせもしない素早い身のこなし…
『肉体が躍動する』という感覚に近い。
誇張でもないことは、今ではよくわかるだろう?」
ケイト「…うん」
フィン「『神の恩恵(ファルナ)』を得て、ステイタスを授かれば幼い子供でもモンスターを撃退できる。
それほどに強力なものだ。
ロキが言うには恩恵とは促進剤で、元々眠っていた能力を引き出すきっかけに過ぎないそうだけどね。
だが君は何度も死に続けたことで、死の気配に鋭敏となって…
人間という殻を恩恵のないままに破り、技…特に戦闘と、身体に合った適切な動かし方という技術を極めた。
格上の存在ばかりと戦い、大気の流れからも恩恵抜きで動きの全てを予測してみせ
適確に力を横に逸らし続け、Lv.6の猛攻を見事受け切って、それに慣れてみせた。
30分にも渡る、激闘の最中でね。
動き方にも一切無駄がなく、逆に身体の動きの流れを全て把握しつつ利用していたそれは…芸術的だったよ。
あの腐食液の爆弾を相手に、鮮やかに歯牙にもかけず勝ってみせた時のようにね。
『実に、見事だ』…そう感じたのは僕だけじゃない。
その戦いを見届けた全ての人が抱いたものでもある。
しかも三日三晩徹夜で走り抜いた後の戦いと来た^^//(くす)
だから理由抜きに、君を入れることを総意で望んだ。
君を逃せば痛い、そう誰もが思ったからこそだ。
恩恵を刻んだ君との戦いを望む者もまた数多くいたからね。
だから僕は君のことが気に入った。気になった。気にかかった。
今にして思えば、これが恋のきっかけだったのかもしれない。
そしてそれが深みを増して決定打となったのが、あの日…君と再会した時だ。
『フィアナ』が、そこに実在したようにも見えた。
目を疑った。全身に衝撃が走った。前にも言ったようにね」