第18章 絶対安静
あの当時…目の前にいるのに助けられなかったことは絶大な苦痛だっただろう。
僕が両親を失ったあの日、あの時のように…
自分を助けようとしてのことだ。その姉を助けようと暴れたが剣は抜けず、無論動くこともできなかった。
自身の血が傷口から入って苦しむ姉から目を逸らすこともできず、死にゆく様が目に焼き付いて離れなくなったという。
そして自分の身体から出る血は見ても何も感じないのに、人がそうなりかけるだけで動悸が止まらなくなったらしい。
早い話が…決して消えない深い傷、トラウマを残した。
溜まりに溜まったそれらを吐き出した後、またひとしきり泣き叫び出した。
それまで泣けなかったこと、聴いてくれる相手さえいなかったが故か…
彼女は決して離すまいと、必死に縋り付いて泣きじゃくり続けた。
それが昼時になるまで続き、何故泣かせたかについて神フレイヤから睨視されながら低い声で問い詰められたが…
ケイトが泣きじゃくりながら、懸命に僕へお礼を言いつつ訴えかけてくれたことで誤解はすぐに解けた。
それからの一日は身体に負担がかかるから浮遊で動かすのも禁止し、ベッドの上から動かないよう指示し…
途中から神フレイヤがトランプを持ってきて共に遊ぶことになった。
最後の一日は僕は寝る時しか共には居られなかったが、ロキと共に時間を過ごしたらしい。
ロキ「大丈夫や。うちが、護ったるからな」
『護れなくて、ごめんね』←生みの母親(432ページ参照)
ケイト「ひっ…」がたがた
ロキ「んー?どないした?」
ケイト「護れ、なくて、ごめっ」がたがたぶるぶる
ロキ「ちゃうちゃう!お前は十分護ってたで。
フィンが怪我しないで済んだ、リーネ達皆を護った。
お前のあの光と緊急馬車の分身がなかったら、あの5時間濃縮鍛練がなかったら…あの襲撃で死人は確実に出とったやろ」
手を横に振りながら言う中、それでもケイトは…
ケイト「でも…居るだけで…本当は、自分なんて居ない方がよくって」がたがた&真っ青
ロキ「街の奴等の件が尾を引いとるな、こりゃ;)
ええか?ケイト」ぎゅっ
そう怯えるかのように震える左手を、ロキは両手で取って握り締め、諭すように言葉を紡ぎ出した。