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Unlimited【ダンまち】

第18章 絶対安静





彼女に出会えて、僕は変わった。らしい。

少なくとも周囲の目にはそう映った。目に見えて変わったそうだ。


僕が一人の男としてこれほどに一人の女性に焦がれるのは『人生で初めての経験』だった。



僕の目標は一族の再興。
それは絶対に成し遂げると決めているし、投げ出すつもりなんて毛頭無い。

でも彼女……ケイトと出会ってから、恋に落ちてから、それすらも『どうでもいい』と感じてしまった。


失ってからでは遅い、失うぐらいなら死んだ方がマシだ。
彼女のいない世界など考えられないし、『考えたくもない』。

いくら冷静ぶっても、いくら風格を持っていても、いくら名声を得たとしても…やっぱり僕も、一人の男だった。
恋する人を欲する、どこにでもいる一人の男だったんだ。



再会してすぐに怒ろうとしていたというのに…
その鬼気迫る護り抜かんとする姿を見た瞬間、それすらもどうでも良いと…感じてしまった。全身に衝撃が走り、高揚した。
指示を出すのを忘れてしまうほどに…←278ページ参照

『恋』という感情の芽生え、人生で初めての…想い。


両親以上に焦がれ、野望以上に焦がれ、愛しい想いに焦がれ、
気付けば頭の内のほとんどを占めていて、上の空になることもしばしばあった。

それ自体が、0歳から今までの記憶を持つ僕であっても身を持って得た『初めての経験』だった。



虐げられるのが普通と化していた小人族に、何故知恵を絞らないと怒りを感じていた。嫌っていた。

しかし…それでもなお護り抜こうとする、
その中には同じ思いをして欲しくない、同じ痛みを味わって欲しくないという…純粋なまでの、真っ直ぐな熱い『想い』。


そんな一人の女性だから惚れたのだろう。

ヒューマンでも何でも関係ない。そう思うほどに、恋焦がれていた。

一緒にいるだけで心が温かくなった。心が躍った。
彼女に嫌われることなど考えたくもないほどに、夢中になっていた。




『君が欲しい』と、自分でも止められないほどの想いに打ちのめされていた。


恥ずかしいことに、僕自身『42年の人生』よりも迷わず『ケイト』を取るほどで…

一瞬の躊躇さえも抱かないほどのそれに…それだというのに、それを心地よくすら感じていた。



『これが人を好きになることなのか』と、漠然とした想いがいつも胸を占めるようになっていた。



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