第18章 絶対安静
深呼吸した後、天を仰いだ。
あの日、泣き叫んだ時のように。
今ここにいる場所は部屋で、天井がそこにある。
それでも…雨の中で見えたそれは、曇った空だった。
あの日に誓いを立てた。
川べりで、森の中で、それまでの自分と雌雄を決した。
フィン「…僕の、呼んで欲しい名は…」
選択肢は二つある。
・フィンとして今後も生きるか。
・二人きりの時だけと条件を付けて、ディムナと呼ばせるか。
後者だけはない。
今更戻るつもりもないし、戻っていいとも思わない。
そんな生温い覚悟じゃない。
だからこそ…ケイトは、呼んで欲しい名を問うたのだろう。
僕自身の抱くそれを憂慮して。
本当に…敵わないな(溜息)
ケイト「?」
君は、過去を聞いて「辛かったね」と同情するわけでもない。
それまでに真剣に生き抜いてきた。32年間、貫いてきた。
その覚悟を読み取った上で、その深さを理解して…寄り添うことを選んだ。
だからこそ今、問うているのだろう…
今後もディムナと呼んでいいのか?と……
話してよかったと、そう不思議と思った。
それでこそ、という思いもあった。
フィン「ふふっ^^//」
ケイト「…あの、呼んで欲しい名前は?;」
フィン「君は、僕の一番だ。
どこまで遡ったとしても、君以上の存在はいないだろう。
そんな君だから…僕は心から惚れた。
だからこそ言うよ。
今後も、『フィン』と呼んでくれ。
それと、この過去は墓場まで持っていくつもりだ。
誰にも伝えないようにして欲しい。
たとえ…僕達の子供が相手だとしても」
ケイト「…わかった。
それでこそフィンだよね^^//」くすくす
フィン「僕がどう出るかもわかっているのに聞くなんて…
随分野暮で遠回しなことをするんだね」ふっ
ケイト「そうでもしないと後々後悔するんじゃない?」
フィン「ああ。そうだね…
だからこそ、助かったとさえ思うよ。
覚悟を決めた上で進んだ道だ。今更戻る気も、ましてや投げ出す気もない」
ケイト「でなきゃ32年も貫けないよね」
フィン「ああ。こちらとしてもそれで無かったことにしたくはないからね」
ケイト「それでいいんだよ。
一生、付き合う気満々だからね。こっちは^^//」
その笑顔に、僕は堪らず抱き着いた。