第18章 絶対安静
ケイト「……ディムナ・マックール?」
フィン「僕の名は?」
ケイト「…ディムナ?」
フィン「…ああ」こく←僅かに眉間に皺が寄っている
ケイト「ディムナ…どうしたの?
なんか…苦しそうだよ?」
フィン「いや…ははっ。
思った以上に、きつくてね。
捨てたはずの名で呼ばれるのは――」
…ぎゅうっ
視線を僅かに逸らして呟いてから数秒ほどの沈黙の後、ケイトは僕に抱き付いた。
フィン「?」
ケイト「…決めたんでしょ?自分で。
それも含めての『フィン』なんでしょ?
ディムナも含めて、それごと生きた証としてフィンとなって、今も皆の中に残ってる。
だから…だから……私の惚れたフィンは、その『全部』なんだよ」
フィン「!//」
目と目を合わせながら言われた言葉は、僕の胸に静かに響いた。
ケイト「私の特別は、一番は…あなた、ただ一人だよ。
呼び方で全てが変わるわけじゃない。
呼び方一つ変わった所で、他の何かが変わることはない。
特に!私が惚れたこの『心』とかね!^^//」
フィン「…//」
僕の心を指差す為か、僕の胸に人差し指を真っ直ぐに向けて触れてきた。
ケイト「だからね…自分の決めたそれを、教えて?
あなたは…何て、呼んで欲しい?」
フィン「……
すーーーはーーーーー」
それから思考を纏めだした。
ディムナと呼ばせたのは、ただの好奇心だった。
そう呼ばれればどう思うか、どう感じるのか、それを身を持って知りたかった。
でも実際に得たのは…両親のそう呼ぶ声と、最期に向けられた笑みのフラッシュバックだった。
昔からすれば、それまでに決して無かった『好意を寄せてくる者』。
小人族だと馬鹿にされ、生意気だと誹られることは最早普通だった。
好意を寄せてこられたのは、冒険者になった後。
それも、名声を得た後からだった。
純粋に、僕という存在と向かい合ってくれる人は…0に近い。
それも当然だ。
過去を晒せるほどに想いを寄せる人など、それまでの僕にはなかったのだから――
そして目の前に…人生で唯一、初めての相手がいる。
既に道は選んでいる。過去との雌雄も決していた。
それでも、呼んで欲しいと…僅かな望みがあった。
別に戻りたいというわけでもない。
ただ、呼んで欲しかった…