第3章 家族として
5人が出かけた後の『黄昏の館』(ロキ・ファミリア本拠地)、執務室…
フィン「弱ったね…」
高レベルの冒険者なら事の重大さはわかる。
階層主級を3体含めた5000匹を、丸ごと一つの魔法で倒すということの異質さが。
それは例の発展アビリティで説明はついた。
魔操作で街中の大気に散在するそれを使ったのだろうと。
ただでさえ、僕らが駆け付けた時はちょうど倒した所だった。
ロキがケイトと契約しているという精霊を呼び出して相談した結果、造った水晶に少しだけ細工していた。
精霊が実体を失ったこともその時に知った。
僕らの記憶の中の一緒に旅した記憶だけをクリエイトで時間指定で読み取る道具を作った。
魔法で倒したという記憶もまた、その時にクリエイトで作り出した。
その倒す所までの映像の提出も神とギルドから迫られたけど、同じクリエイトという魔法から作り出して合成したそれだったからこそ、その偽装がばれることはなかった。
でもあの当時のケイトの魔力は既に…その域へと達していた。
あの幻想的な光景に、親指の疼きが止まらなかった。
それから後は意識もないこともあって、提出の必要がなかったから助かったけれど……
魔力保有量とユニーク発展アビリティ《魔操作》の開示。
魔法の際に、街中に散在する大気中の魔力もまた魔法として放つことでの威力だという証明はした。
魔力が高密度過ぎるあまり、魔法の威力がそれに相当したという点はわかるだろう。
でも低レベルの冒険者は、単騎で階層主を倒すという凄さを知っていない。
真似事をすれば死は確実、一人をひいきしているのだとまで言われ兼ねない。
しかし神は知っている。
人が神に、嘘を付けないということを。神は、人の嘘を見抜けることを。
神に問い質されたけれど、ロキから精霊に頼んでクリエイトで記憶改ざんの魔法をかけられた。
時間指定で、神に証言を求められたその時だけを見計らって。
無論今では解けている。
結果として誤魔化せたけど、他にも問題はある。
新米の冒険者に、しかもたった一人に構い過ぎていると捉われかねないこと。
Lv.1でも倒せるならとLv.1の冒険者が階層主に挑みかねないこと。
遠征のチーム分けでどの人と一緒にするか。
記憶を失っていた件を振りだと言う人もいる可能性。