第18章 絶対安静
フィン「涙が涸れた頃には雨が止んでいて、夜も明けていた。
その後…僕は父親と母親を墓に埋めた時、二人に由来する全てを返した。
二人から授かった名、ディムナを除いてね。
代わりに、僕はフィンと名乗った。
フィンとは、小人族の言語で『光』を意味する言葉。
その日、僕は全ての覚悟を込めてそう名乗り出した。
一族の再興を。生まれてくる新たな命に希望を与える、小人族の光を。己の全てをそれに捧げようと、覚悟を決めて。
自分を救い希望を見せた両親に報いる為、一族への絶望をも覆すあの光をもたらす為、小人族の全てを変える為…
始まりのその日から疼くようになった右手の親指が、そう囁いた。
だから僕は、今後もフィンであり続ける。
フィン・ディムナという名を変える気はない。
君に明かしたのは、不誠実だと思ったからだ。
君の全てを僕は知っている。だというのに君は僕の全てを知らない。
不公平だろう?」
ケイト「……うん」
フィン「僕は…最初から、恋愛事に現を抜かす気は欠片も無かった。
最優先すべきは一族の復興、それだけの為に僕はいるのだと覚悟を決めたあの時から…」
ケイト「………」
フィン「辛気臭かったかな?長くなって済まない」
ケイト「頭を振る)ううん。
話すの、それだけでもすっごく覚悟がいると思う。
だから、そんなことは思わない。ちゃんと聞かせて」
真剣な眼差しを向ける彼女に、僕は笑った。
やっぱりだ…君は、ちゃんと向かい合おうとしてくれる。
その生き方を、長年に渡って貫き続けてきたそれを、否定しようとしたりはしない。
フィン「ふっ)じゃあ…続きを話そうか」
ケイト「どんと来い!!」ふんすっ!
フィン「ふふっ^^//」
ケイト「?どうしたの?」
フィン「いや…あの日からすれば、こんな風に笑って話すことなんて…
想像もつかなかっただろうと、ふと思ってね」
遠い目になって思わず呟くと「なら擽ろう」と真顔で言われて、余計に吹き出し笑いが止められなくなった。
ケイト「だから何で笑うの!?;
笑えないほど辛いなら、無理やり笑わせればいいじゃん!手伝うよ!」
フィン「あっはっはっはっはっ!そういうことじゃない、そういことじゃ…
あっはっはっはっはっ!^^//」
それが救いになっているなど、きっとケイトは思ってもいないだろう。