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Unlimited【ダンまち】

第18章 絶対安静





フィン「ケイト…僕の、本当の名前は違うんだ。

僕の名は、ディムナ…ディムナ・マックール。


それが…僕の本当の名だ」

捨てたはずの過去、名。


それをケイトにだけは伝えようと、気付けば口走っていた。

彼女に示す誠意のつもりで、口をついて出ていた。



ケイト「ディムナ…?

家名じゃなくって?」

フィン「ああ。家名はマックール。

君にだけは…きちんと話しておきたい。
皆に伝わらないようにだけしてもらえないかな?例の水晶でさえも」

ケイト「…わかった。真剣な話なんだね」

フィン「ああ。僕が…自分で決めて、話さずにいたものだ」

それから僕は話した。


0歳児の時からの記憶があること。

田舎とも言える位置にある村が故郷で、そこでは同族は他種族にへりくだっていたこと。

両親でさえも同じで、それを嫌っていたこと。

村長の家の書斎で何百冊、何千冊を読み耽り
頓智を利かせたそれで村人に一泡吹かせ、一部の者からは生意気だと拳や蹴りが振るわれ甘んじていたこと。



フィン「幼かった当時は、あんなみじめな両親や同族とは違うと言いたかった。
違うという所を示し、自分は違うのだと認めさせたかったのかもしれない。

そして10歳になった時…僕は命を失いかけた」

ケイト「!!…え?盗賊」

フィン「いいや、モンスターさ。
君の所のように結界は張られてはいなかったからね。

真夜中の襲撃で、村のあちこちから火の手が上がった。
僕は両親の制止を振り切って、悪童や女子供を逃がして火の手を消して回った。
恐怖と戦いながらね…

僕は…フィアナとして擬神化された英雄達のようになろうとした。
でもそれは『勇気』でも、蛮勇でさえも無かったんだ。


僕から見て死角にいたモンスター、その牙が迫った。

その時、学んだ知識で慢心していたのだと悟った…
どれほど知識があったとしても、それは暴力で容易く蹴散らされるのだと…その時に身を持って知った。

そんな僕を、両親は身を挺して庇って牙に貫かれた。


その一方で小人族の同胞は逃げ出し、そこに「絶望」を見た。

そして自分よりも強大なモンスターに立ち向かって自分を守った父親と母親に、『勇気』という名の『希望』を見た」

ケイト「!…勇気」


フィン「ああ(頷)

君が街に対してしてみせた、あれと同じものだ」


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