第18章 絶対安静
フィン「ケイト…」そっ
頭をそっと撫でる中、ケイトは未だ深く寝入っているようで身じろぎもしなかった。
フレイヤ「…やっぱり、あなたと居るのが一番安心していそうね。
ケイトのこと、頼むわよ」くす
フィン「…ああ」
その返事を聞いて満足したのか、神フレイヤは一人部屋を出て去っていった。
そんな中、僕だけがまだ出自を話していないことに…僅かに、心に引っかかった。
あの日…ロキとプレブリカ村で巡り会った時、僕はまだ恋を知っていなかった。
知らないまま『初恋』だと言い、求婚しかけていた。
勇気を持つ小人族だというだけで、択ぼうとしていた。
その中には、ケイトに出会ってから抱く『ドキドキ』も、嫌いと言われるだけで死にたくなるほどの『絶望』も無かった。
恋がこれほどに刺激的で、感情的で、盲目になるとは思いもしなかった。
全てを捨ててでも、賭してでも護りたいと願っていた。それも心から…
そう考えた次の瞬間、ケイトに庇われた時の光景が浮かぶ。
だが…10歳の時、モンスターから両親に護られた時と同じように…また、護られた(ぎり)
また、死なせる所だった。
何も出来ない。返せない。護れない。
過去に、両親に、ケイトに…抱いた数々の感情が、また脳裏をよぎる。
視界がまた、涙で滲む。
両親を失ってから後、ロキの言う僕の『初恋の人』を失った時でさえ出なかった涙が、これほどに容易く出てくる。
メリサに抱いていたあれが『初恋ではないこと』を身を持って知ったのは、ケイトと恋に落ちた時だ。
ケイトの名を聴くだけで、何の話をしているのか気になる。
気付けばケイトのことが頭から離れなくなっていた。ケイトのことばかり考えていた。
ケイトのこととなると、居ても立っても居られなくなった。
本当の初恋を…衝撃を…愛を…与えてくれたのは、ケイトだった。
ぎゅううっ
気付けば、僕は庇われたあの時のように覆い被さっていた。
ケイトと両親が、そうした時のように…
ケイト「…?
……フィン?…あれ?…今、何時?」ぼー
フィン「起こしてしまったね。済まない」
ケイト「ううん…って何で泣いてんの!!?;」ぎょっ!
がばっ!と勢いよく起き上がるや否や痛みで悲鳴を上げながら蹲った。
その時、気付けば僕は口走っていた。本当の名を――