第17章 雨
フィン「早い話が…あの罵倒は、彼なりの叱咤激励だ。
あれは最早、不器用を通り越しているとも言えるけどね」溜息&腕組
書類で知った彼の過去をもとに推測した結果、得たのはそれだった。
その言葉に、団員達はティオネとティオナも含めて言葉を失っていた。
雨が止んだ頃、火柱が上がった。
ベートの魔法は傷を負えば負うほど強烈なものとなる。
報復として放たれたそれは恐らく、『鍵』など残さないほどの苛烈なものだろう。
その後に調査した所、そこには人の焼け焦げた臭いしか残っておらず、生者は一人としていなかった。
闇派閥との因縁は、まだ少しだけ続きそうだ。
ケイトが復活すれば、その時点で決着がすぐ着く。
クリエイトという魔法で『闇派閥だけを捕らえる魔法』というものをも造り出せるだろうからね。
その2日後の朝、彼の独白がロキの目論見を以って明かされることとなる。
僕達はベートが来る前に廃墟とも言える戦場となった場所へ潜み
ベートが来た頃にロキに促されたアイズが尋ね、彼は答えた。
ロキ「勘違いさせたまま誰かとお別れすんのは嫌やろ?」
ベート「っ…」
彼の独白は叫び声となって響き、僕達の耳を震わせた。
ベート「雑魚が嫌いだからだ!」
アイズ「それだけ、ですか?」
ベート「雑魚のみっともねえ姿なんざ見たくもねえからだ!」
アイズ「それだけ?」
ベート「雑魚の泣き言を聞くと虫唾が走るからだ!!」
アイズ「それだけ?」
ベート「それ以外に何がある!!!??
弱え連中を貶すのは強え奴の役目だ!俺達がしなけりゃ誰がするんだ!!?
…(ぎりっ)
そうでなけりゃあ益々勘違い野郎が増えやがる!冗談じゃねえ!!
弱ぇ奴は戦場に出てくんな!弱ぇ女は巣に引っ込んでろ!身の程を知りやがれ!!
何が悲しくて弱者の死に様なんざ見なきゃいけねえんだっ!!!?
事ある毎に泣き喚きやがってイラつくんだよ!!モヤモヤしやがる!!
雑魚が目の前で野垂れ死ぬのはもう御免だ!!
もうっ――誰も哭くんじゃねえ!!!」
誰も悲しまない、誰も死なない世界などを夢見ているわけじゃない。
ただ、『自分の見える世界でだけは誰も泣いて欲しくない』という『我が儘な願い』だった。
聞いていて悲痛な思いになるほど、否が応でも感じさせられるほどの…凄惨な叫びだった――