第17章 雨
ティオナ「それって…誰も死なせたくないってこと?」
ティオネ「バッカじゃないの!?そんなの、無理に決まってるじゃない!!」
闘国(テルスキュラ)という牢獄で数え切れないほど殺し合いを繰り広げさせられ
二人ぼっちの世界を守ってきた彼女達の方が死についてはよく知っているだろう。
メレンでの戦いの発端は、その国で以前所属していたファミリアから再びティオネとティオナの二人が狙われ、ロキ・ファミリアに手を出されたことによるものだ。
その当時、「僕が勝ったらティオネ達にもう近付かないでくれ。約束を破ったら君達の国を潰しに行く」と脅しをかけた後『儀式』という戦いで倒し、その事態は既に収束している。
ヘレイオス街でのそれもまた、同じような方法でケイトを護った。同盟という書類付きで。
ティオネ「知らない奴まで全員護れるわけないでしょう!?」
フィン「いや、きっとそういうわけでもないんだろう」
ティオナ「?どういうこと?」
フィン「苦笑)^^;
ベートが罵倒をやめないのは、もっと単純な理由…そう、自己中心的なものだ」
恐らく彼は…弱者を見る度に、昔の自分と重ねてしまうのだろう。
両親も妹も幼馴染まで失った、過去の自分と…
そして腹が立つ。憤る。
弱者を見放せないまま、嘲笑って蔑み続ける。
それを受けてもなお変わらないから余計にまた憤る。
同じ罵倒でも、街の人達とは全く異なる。
彼は先を見据えて死なないよう言っているが、街のそれはただの罵倒、もはや根本的に違う。
戦場に立てる『弱者』は、己の意思を貫き通せる人間だけだ。
強者の罵倒に、強者の怒号に、吠え返し見返してやろうという気概を持つ者だけだ。
それができないのならば去れ。
「自分が死ぬわけがない」と笑える者など目障り以外の何物でもない。
己の無知さを理解できない人間が『戦場』で生き残れると思うな。来るな。
ベートは罵倒を通して傷付け、戦場から遠ざけることしかできない。
吠えて訴えることでしか、弱者に対する示し方を知らない。
彼は…弱者を変えることはできない。
弱者を変えられるのは、その本人だけに他ならない。
だからベートにできるのは、『弱者の咆哮』を待つことだけだった。
今もなお響き渡る遠吠えの中
天から降り注ぐ雨が、まるで涙が涸れ果ててしまったかのように止もうとしていた。