第17章 雨
ケイトが味わった呪詛は、今までに類を見ない悪質なものだった。
傷が塞がってもすぐに回復はしないほどに。
それが元イシュタル・ファミリアの冒険者達へ牙を剥いた。
後に『アマゾネス狩り』と呼ばれるそれは、凄惨を極めた。
その呪道具で致命傷を負うことは死を意味していた。
ケイトが生存できたこと自体、極めて異例なのだ。
死人が出る中、雨音は激しさを増していた。
そうして日付が変わった4月20日深夜、バベルの塔1階にてアマゾネス狩りの件で関係者が集められていた。
多くが二時襲撃を危ぶまれる元【イシュタル・ファミリア】の冒険者、そして非戦闘員の娼婦。
他にいたのはギルドに護衛を買って出た【ロキ・ファミリア】、あとは【ガネーシャ・ファミリア】の団員。
重傷者のみを【ディアンケヒト・ファミリア】治療院へ残し、暗殺の危険性がある者を集めたことによるものだ。
それはギルドとガネーシャの指示で、貴重な戦闘娼婦、及び上級冒険者を失うことを由としないが故。
広大なフロアでアマゾネスや娼婦達が不安そうな顔をする中、ティオネやティオナ達団員を率いるフィンはアイシャと対峙していた。
フィン「まずは謝らせてくれ。巻き込んでしまって済まない、【麗傑(アンティアネイラ)】。
どうやら探し物をしていた僕達の動きが今回の件の首謀者達を刺激してしまったようだ。
こんな強引な真似をするなんて思いも寄らなかった。
…いや、そんなものは言い訳にもならない。済まなかった」
アイシャ「何で謝るんだよ【勇者(ブレイバー)】。
あんた達のせいじゃないだろ、ガキでも分かる。
悪いのは、こんなことをしでかしやがった連中だ」
その後、アイシャはいずれにせよ襲われていた可能性を指摘し
アイシャ「護れなかった、助けられなかった、そんなことで自分を責めるんじゃないよ。
そっちの方が私達女戦士にとっては屈辱だ。【凶狼(ヴァナルガンド)】にもそう伝えときな」
そこでベートの名が出てきた理由がわからない為尋ねると、彼女は少し躊躇しながらも話し出してくれた。
ベートへ好意を寄せていたレナとベートの話を、ベートの目の前で殺されたアマゾネスがレナだと伝えながら。