第95章 神(しん)
フィン「ケイト…
ケイト!!?」
揺するもなお…
静寂のまま、寝息だけが響いていた
…………
僕は一体…
どうすればいい?
そんな空虚な想いばかりが胸を渦巻いていた
ケイト「けほこほ」
空咳が響く
しかし…
そこに、ケイトの意思は感じられない
意志…
必ず守るという想い
それを嫌というほど逆手に取られて
付け入られて
利用されているだけ
搾取だけで返される
………
なるほど…
確かに『嘆かわしい』という形容こそがピッタリと合う
この歪なまでの状況は……
しかし…
どうすれば、その歪みは断ち切れるのか
自分の責任を自分で取らせる
自分の後片付けは自分でさせる
そんなのは自明の理、当たり前のことだ
だが…それを平然と破り、金も払わず、見向きもせず、金も労力も時間も費やしてまで報いる価値無しとばかりに、自分を大事にすることでしか返そうとはしない
その在り方こそが…「癌」なのだろう
たとえ何を貰おうとも、当然のこと
今後も貰い続けたい、いや……
在って当然としか思えない
贅沢病?としか言いようがない
自覚も無い…他者を蝕むばかりの、依存病
他力本願
願いの為に人を街を犠牲にし、人に全てを支払わせ、英雄ごっこに身を窶す自分に酔い痴れては、犠牲にされてもなお自分を守ろうと必死になって死んでゆく周囲を嘲笑う
そして相も変わらず笑い掛ける
なんにも悪いことなんてしてませんよ、しませんよ、と
胸の奥で何かが黒く燻ぶり、チリチリと熱を上げては絶叫が木魂する
馬鹿にするなと、憎悪が止められない
怒りが、憎しみが——怨みが、止められない
その心を理解する内に…ようやっとわかった
その心こそが
他の、良心故の犠牲を、蔑ろにし、軽んじ
減らそうともせず、自分では何一つとして果たそうともせず、報いようともせず…
ただただ笑って、犠牲になってゆく姿を笑っていられる心こそが、癌なのだと
その心を、意志を、無くさない限り、癌は決して無くならないのだと
そしてそれは…誰もが通る道なのだと
誰もが、誰かを犠牲にして生きている
犠牲にしている側は、犠牲にしている自覚なんか無い
自覚したとしても、犠牲にされる側が生きている限り甘え続けてしまう
だから無くならないのだと
それを無くすには…根絶させるには……簡単な話だ