第17章 雨
紙で書いて伝えても、「見えませーん」「口で言えば?」と高らかに伝え、ぎゃははと嘲笑が響き渡った。
その時、ケイトはまだ幼かった。
身振り手振りで言おうにも言えない。
できることさえもできなくなった彼女はどうすればよかったのだろうか…
どうすれば赦してもらえるのか、必死に考えての方法。
それでもなお、街は嗤う。嘲笑う。
何を言っても伝わらない。頑張って声に出しても伝わらない。
唯一残された方法がそれなのに、それでもなお平気で続けられる。
ケイトは一体どんな気持ちだっただろうか?
一人きりになってもなお、泣く行為さえも心の中だけに留めて、精神が壊れ落ちていく気持ちは、どんなものだったのだろうか?
街の人達に対して諦めに似た感情を抱いていた。
そんな人の温かさも知らないまま育ち、ようやく温かさを知った後になって楽しく過ごせるように徐々に回復していった。
少しずつ話せるようになった、そんな矢先に15歳の誕生日になって再び全てを失った心境は…
回復しかけたそれさえも、また全て奪われた気持ちは……どうだったのだろうか?
わかればわかるほど、理解すれば理解するほど疼いた。
そんな街の人達など殺しに行けと、心が叫んだ。
ティオナ『ねえ…ケイト……死んだら嫌だよ。
また、一緒に笑おうよ。笑えなかった分、今笑おうよ。
そうでなきゃ…そうでなきゃ、何の為にここまで来たのかわからなくなるでしょ?
お願いだから…帰ってきてよ。
ねえ…ケイトっ;』涙震
面会できないまま部屋の扉の前で呟いた。
ただ生きて帰ってくるだけ、それだけのことが…とても、難しいものだとアミッドのそれを見て悟った。
それでもそれを聞いた街の人達が楽しそうに笑っていたという知らせを受けて、憎くて仕方ないと余計に強く思った。
それに突如ブレーキがかかった。
その結果、ケイトに巡り会えたこと。
本質を知り、反抗期を迎えて、ありのままに振る舞えるようになり、ここまで成長できたこと。
大好きだと言う彼女の笑みが、脳裏によぎった。
街の人達がケイトにしたことを纏め上げていく中、殺意ばかりが込み上げていた。
ベートは…いなかった。ベートのそれにも腹が立っていた。
あの発言は無理。でもケイトは感謝してた。
何らかの意図を感じてのことなんだろうけど納得いかない。