第17章 雨
結局、最後に抱きついたのはフィンとアイズだったけど…
とっても幸せそうな笑顔を浮かべてて、心底安心したのを今でもはっきりと覚えてる。
だから私は…ケイトが最低な人間だなんて思えない。
人の為を思って、たくさん考えた上で守る為に貫いたその生き方は立派だとも思う。
記憶を知ったあの日、きっといいことがあるって元気付けた。
それでもケイトは走っていった。守る為に。街を助ける為に。
それでも街は高らかに告げていた。悪人だって、最低な人だって。
一方的に誰もが言うそれは、その様子は、どれも聞いてて見苦しく感じた。
その日…私が守るんだって、誓った。
自分で自分を守れないケイトを守りたいって…そう、思ったんだ。
きっと街の人達は、自分が悪いことをしてるなんて思ってない。
言いたい放題言って、抵抗しないから続けて…
鬱になって記憶喪失になってもなお、それを知ってもなお続けていた。
その態度を変える気なんて全くないんだって、否が応でも伝わってきた。
はっきり言って…街の人達はおかしいと思う。犯罪者集団だと思う。
人のそれはよく見るのに、自分のそれは見ずに言い続けることで追い込み続けてる。
自分を守る手段も何もかもを失ったケイトを見て、だから私達が守るんだって強く思った。
そんな想いは、ケイトが死に掛けた時に爆発した。
暴言を吐いたベートが赦せなかった。
何より苦しめ続けた上で鬱病まで追い込んでもなお続けていられる。
そんな仕打ちを笑って続けていられる街の人達が、人外に思えてならなかった。
死に掛けた時になって、ケイトと一緒に過ごしていく内に本質を知って…余計に赦せなくなった。
ケイトは声が出せなかった。
父親の環境で、高圧的に言われる中で口答えしたら殺されかけるから。
長年の習慣で、声が出せない障害を抱えていた。
伝える術も無いまま、何度も何度も謝っていた。心の中で。
声を出せないなりに伝える為の方法…それこそが、無干渉だった。
もうこれ以上苦しませたくない、ごめんなさい、その意思表示だった。
そしてそれは通じることもないまま、汲まれることもないまま精神を病ませていった。
それを見てあの街の輩は笑った。死んだように生きていればいいんだと罵った。
赦せないという想いが爆発しかけていた時、フィンがそれを纏めてくれた。