第95章 神(しん)
鬼が人間社会に紛れ込んで
いい人だと思わせて回って
自分が払うべき対価を、騙した相手に支払わせて回る
詐欺じゃん
ペテン師じゃん
引いちゃいけないジョーカーじゃん
ずっっと自分に酔ってる道化じゃん
最っっ低やん
クズの中のクズやん
出会った時点で、殴り掛かられても殺されても文句言えんやん
おかしくない
嫌われて当然じゃん
そんな意見が口早に寄せられた
『自分の為に散っていった命(ナビィ)』の為に
何かしたいとも思わない
自分を大事にしたいとしか
自分に楽な方ばかりを選ぶ
自分に都合良く彩られて、当然とばかりに——
ケイト『ナビィ!
ナビィっ
ナビィーーーーーーーーっ!!!!』瞑目し、声を潰すまで慟哭を上げる
十年に渡って見せ続けてきた姿…心根…本性……
それは…
分かり切っていたことで
自分のせいで死んだと心も痛まないクズを前にしても
それに騙されている、こちら(みんな)を見ても…
どちらも死なせないように…同じ想いを、痛みを、哀しみを、苦しみを、味合わせない為に…
たとえ——味合わせてきたものだとしても!
心が強い
詐欺から目を覚ませると信じて——
必死にどちらも守った
信じてくれるそれを…通して、信じようとまでしてくれた
苦しめたくないから……
どちらを取るのどちらを信じるのと喚かれたら…しんどいだろ?
ずっと…お母さんからどっちを取るのと言われたから
勿論お母さんを取ったんだけど……
困るだろ?
自分で気付いた方が…後々力になるはずだから
私が居なくなっても(死んでも)…
どんな相手にもブレずに、優しさを向ける
その一貫した在り方、心の強さ…
記憶を失わされてもなお
記憶喪失にされてもなお…
必死に守ろうとした、健気な…
自らを押し殺した、自らを削る、愚直なまでの愛情を——
僕のことをブレないと評しているが…
君こそ…人のことを言えないとさえ思う
自分というものをしっかり持っている姿が
ブレないで、寄り添ってくれる優しさが、厳しさが
全部好きだと言ってくれた
救われたのだと
^^//
満面の笑みで——
ああ…僕の方なんだよ
それは……
その優しさに、一途さに…救われているのは…僕の方なんだ
君だけじゃない
逆に…どれだけ傷付けてしまったか…深く、深く、悔恨が残って仕方ない