第17章 雨
そんな日から次の日…
4月19日、その日は朝から暗雲が垂れ込んでいた。
遠征の日に『第二軍が捕まえた暗殺者達(513ページ参照)』は見張られていた中でもなお、止める間もなく揃って自害。
歯の間に即死性の毒を仕込んでいたらしく、馬車で移動中に意識を戻した直後のことだったそうだ。
だが死体は念の為に取っておき、その日中に開錠薬(ステイタス・シーフ)を用いて背中に残された神の名と所属を暴いた。
が、それは精霊の伝えたファミリアの所属ではなく別のもの、【セクメト・ファミリア】だった。
そのファミリアは『暗殺者を育成・派遣する犯罪組織』であり、どうやら闇派閥の残党に雇われていたようだ。
タナトス・ファミリア、イケロス・ファミリア、その居場所がわからないことには捕まえようもない。
さて…どうしたものか。
人造迷宮が使えないとなると、そこからさして遠くないダイダロス通りか、はたまた地下水路あたりかな?
イシュタル・ファミリアの捜査と共に同時並行で探しているわけだが、中々尻尾を掴ませなかった。
そう考え込んでいると、昼になった頃に雨が降ってきた。
フィン「雨か…」
執務室で窓に叩きつけられる水の粒に、思わず呟いた。
何故か嫌な予感がした。胸騒ぎを感じた。
そして右手の親指が一瞬疼いた気がした時、ずぶ濡れで息を切らしたラウルが慌ただしく入ってきて声高に報告した。
元イシュタル・ファミリアの冒険者、アマゾネス達が暗殺者に襲われているらしい。
誰も彼もが呪道具を持っており、それで傷付けられて死んでいく者が今も増え続けているそうだ。
フィン(攪乱か?)
その情報を聞いて、いの一番に頭に過ぎったのはその可能性だった。
が、それは一先ず置いといて、アマゾネス達を護るよう援軍を送ることにした。
ケイトの所には…いや、【猛者】がいれば早々襲われはしないか。
何故かフレイヤ・ファミリアは協力的で、護衛を自ら申し出てくるほどだ。
こちらとしては願ったり叶ったりだが、それも例の死闘、及び誘拐未遂をチャラにする為のようだ。
借りを返しに来たというのが、まさか訴え出なかった件のそれだったとはね(やれやれ溜息)
ラウルへ指示を飛ばす中、心の中でそう溜息を零した。