第94章 創傷(そうしょう)
気付けば…
削りをしていた(ケイトの、削り故の不調を回復させる為に)
貴女の想いを無碍にしたくはなくて
大事にしたくて
損しかない実在化でも…
それに、守られたから……
見切りを付けるのが
非常に困難であることを差し引いても…
これ以上、もう削らないで欲しい
投資しないで欲しい
ケイトのしているのは
投資ですら無く、溝(どぶ)に大金(大事な記憶)を捨てているようなものでしか無い
だから…止めた
だが…そうでなければ、味方しただけで、力になっただけで、即座に消されていたのは言うまでも無い
そういう存在だからこそ…
私達は救われた、助けられた
だから今度はこちらが助けたい…
そう願っての想い、言葉、行動だった……
それを涙を浮かべながらも、受け止め
…静かに、寄り添い合ってくれた
もう動けないだろうに…
そんな身体に鞭を打って……
そんなケイトを好きになれない人もいるだろう…――
セルフネグレクト?
と、見ていて思った
だが…違った
ちゃんと、その根底には想いがあって、実行に移していた……
もう、誰も死んで欲しくない、消えて欲しくない…
あんな想いは二度としたくない
人にもして欲しくない
自分は生きていていい人間じゃない
守れなかった
約束も…母も…何も守れなかった
家も無くし、財も奪われ、証拠隠滅の為に父に燃やされ、確実に死んだのに生き返ってしまった
一人だけ取り残されて(生き残って)しまった
一緒に逝くよ
という涙を、言葉を
母は払った
生きて――
そう願った
幸せになって――と
それを受けて、涙を流す中…
母の亡骸を前に、慟哭を上げる中
うるさいな
と迷惑そうな声が聞こえた
「なんで生き残ってんだよ
確実に止め(とどめ)を刺しただろ
「生きてたら困るんだろ?どうすんだよ
「食料の供給止めてもなあ…神様(デメテル)に邪魔されたし
「何度殺しても生き返るんだろ?サンドバッグにでもしたらどうだ?
「そんなことしたら怒られるぞ
前に神様からお叱りを受けただろうが
外聞もある」
一言で言うなら冷戦
それに尽きる
そんな環境で育てば…どうなるか……
誰でも…赤子でもわかることだ
だが…それでも……人よりも自分を粗末にする
自分よりも、人がどうかなる方が辛い
治らないのだから、生き返らないのだから、と…
