第94章 創傷(そうしょう)
ケイト「早く帰りたい」
なでなで
ケイト「…お母さんに会いたい」俯き消え入る小声
ケイトにとって死ぬことは
会いたい人に会う為の、大事な人に、大事にしてくれた人に、再会する為の唯一の手段
二度とこの世には戻りたくない
それは常々語られていた
ケイト「心無くしては、力は害悪へと変わる
人を見る余裕が無くなったとしても
無関係な人を害して巻き込んで回って
その手段を取った責任も、選んだ判断も、何も罰を受けなくていい、なんの罪も感じなくていい、ということにはならない
してはいけないんだ
その人からすれば…
一方的に害された事実は変わらないから
だから…罪を罪と認めなくなった時点から、人を守る為に取ったからと正当化に走った時点で曇り、歪み、癌へと変わるんだ
そういう人を見ず手段を選ばないそれを
守るとは言わないんだ
違うんだよ
違うんだ…
人を守る為なら…
きちんと守らなきゃ
守れなかったなら背負わなきゃ
後からでもいいから、その人達を大事にしなきゃ
その人達を軽んじるから
その想いを踏み躙るから
害悪にしかならない
そのことに痛みも感じないから
罪悪感も感じないから
罪は罪のまま残り続けてしまう
続けてしまうことに悪が宿るんじゃなく
気付こうとすらしていないんだ
そこが肝心で、重要で、やっちゃいけない根幹なんだよ
自分は正しいと凝り固まって見なくなる
そこが…癌の始まりであり、半グロとなる起点なんだよ
そこが自分であれ、人であれ、同じことだ
変わらない
何も――
本人が、自分の意志で気付き、変わろうとしない限りは、行動に起こそうとしない限りは…何も変わりはしない
そこを軽視し、形骸化し、誰かを守ってるならいいじゃないと無視するから、見ないから…その時点で魂も理も全て歪む…
歪めているんだ、自分の意志で、他でも無い『自分の心』で――
皆(みんな)、自らの意志で、癌一同や、半グロになっているんだ
もうなったら止められない、一度染まったものはどんな方法を使っても元には戻らない
だから――『責任』が生まれるんだ
責任の伴わない自由は…ただの害悪でしかない!!
そこを忘れちゃいけないよ…?
絶対に」
真剣な表情で語られたその言葉は…指標として、記されてゆくこととなる
自らの非を、気付こうとすらしない
それこそが罪だと―
