第93章 深淵(しんえん)
その直後
夜明けのような眩しい光に包まれ
徐々に、瞬く間に、回復が進んでいった
骨が見えていた部分が肉を纏い出し、新たに生まれては引っ付いてゆき
徐々に、肉体としての形を取り戻してゆく
フィン「………」
美しいとさえ思う程の神々しい光に、目の前の急速に進む回復に、目を見開いて固唾を呑んで見守っていた
いや…見惚(みと)れていた
しゅううううううう
数多の光を纏ったまま、光の煙と共に音が鳴る
ケイト「ぱち←目を開ける
……………
あれ?
(むくっ)←上体を起こす
あれ?
治ってる?
動ける?
え?あれ
フィン「っ」涙目
ケイト「動ける!!」がばっ!!←飛び起きる
ぎゅうううう!!←頭を抱き締められる
フィン「よかった…
本当に…よかった…っ
ケイトっ…」わなわな震え
涙をポロポロと流しながら
抱き締めていた
ケイト「フィン…
……
ありがとう
治してくれたんだね…?
ありがとう」
ぎゅうううう
ケイト「でも…無茶しないでね?
フィン「どの口がっ!!
どれだけ心配したと!!
ケイト「う;ごめん;」言葉に詰まる
フィン「赦さない!
一生…側(そば)に置いてっ」
ケイト「………わかった…
フィンがいいのなら……(微笑)
(はっ!!)←瞠目
もしかして深淵を!!←肩を両手で掴む
こっくり←フィンが涙を指の甲で拭いながら頷く
ケイト「ばか!それは…
フィン「やらないと死ぬでしょう!!貴方が!!!」
『…………』
ケイト「一生自由を失うんだぞ?
それでも
フィン「貴方を失うぐらいなら死んだ方がマシだ!!!!!」
『……………』
フィン「君だって…
その為に…また、捧げて…そうなったんだろう?
なら……僕にも…させてくれ
させないなんてのは…よしてくれ」
ケイト「………わかった
ごめん…ごめんね」
ふるふる←フィンが頭を振る
ケイト「ありがとうっ
本当に…ありがとう」涙
ふるふる←上と同様
フィン「礼を言うのは…こっちだ
――ありがとうっ」
涙を双方零しながら、懸命に抱き合った
龍神「これは始まりに過ぎん
今後の…
厳しい道のりのな……
せめて…幸に恵まれることを祈ろう」
後に…宿灘の深淵も、同じ条件だと教わった
儀式とは…誓いの場
決して破られないようになる、誓いを刻み生涯出来なくする場
覚悟の証