第93章 深淵(しんえん)
著しい雷が無数に神殿の上空に轟き、無数の光が瞬き
振動を、星全体を揺るがす程のものを、常に生じ続けていた
龍神が描いた円陣(サークル)の中心に立つように言われた
龍神「もう二度と戻れんぞ?覚悟の上だな?」真剣
フィン「はい!!」真剣な表情で頷く
その刹那、龍神が右手の人差し指を天へ向け、人差し指の先に足元のと同じ円陣が浮かぶ
それがそのまま僕の立っていた円陣へ光の糸が無数に発生すると共に繋がり合い、人差し指の先の円陣が離れ天へ浮かぶ
視線が自然と天へ逸れ…緊張、緊迫感が全身を駆け巡る
その瞬間、龍神が人差し指をこちらへ向けて指ごと手を振り下ろした
どおんっ!!
雷が降ってきた
じゅうううううう
無数の雷(イカヅチ)、無数の光が
円陣の範囲のみへ限定して降り注ぎ、最後に無数の蒸気を発した
辺り一帯に水蒸気が立ち込める中…我に返った
フィン「痛く…ない?」
龍神「見た目には変化は全く無いじゃろうが……
力には雲泥の差が生じる
さっさと行け
助けてこい
フィン「はい!!」だっ!!
隊長「本当に…良かったのですか?」
出入り口付近で黙ったまま控え、一連のやり取りを見守っていた
龍神「あー……
あやつは曲げんじゃろう…(遠い目)
どこからどう見てもそっくりじゃ…」顎髭を右手で撫でる
隊長「………そうですね…
先代の原初の滅神も同じように……」
龍神「さて…助ける様を見守ってやらんとな
不備があってはならんし」
無色透明の水晶を取り出し、フィンを映し出していた…
フィン「……何故…今になって許しが出たのですか?」
龍神「死なせとうないのは皆同じじゃ
地球の者共とは違ってな
っと
愚か者の類の者じゃ
気を悪くせんでくれ」
フィン「……はい
心得ています」
儀式の準備の中でのやり取り、それを思い出しながら……
フィン「はあっはあっはあっ」
龍神「空間転移で飛ばんか;」
しゅんっ!!
黒い円が眼前に浮かんで来たかと思えば、ケイトのいる部屋へ飛ばされた
ありがとう!
感謝を返す中、当然のことをしたまでだとばかりに、ふんっと小さく溜息で返された
フィン「ケイト…
(ぽおおおおお)
目を覚まして…
お願い……!(ぽとっ)
治って!!」ぎゅうっ!!
ケイトの左手を両手で握り締め
有らん限り、力の全てを送った