第93章 深淵(しんえん)
その回復手段さえも分からぬまま…力を流し込んでいた
起きたばかりなのに
僕を抱き締め、力を送り込んだ
ケイト「だいすき^^」
そう笑い掛けてから
再び意識を手放した
隊長「命に別条は無い
落ち着け」
肩に手を置くそれに頭を振った
フィン(なにも…できないの?)震え
魂が泣き叫んでいた…
どうやら……魂は、胡蝶しのぶに近いらしい
闇の影響を抑え込み
光の実在化を何倍にも何乗にもして出力させる部屋
それにより…一時的に死してもなお、実在化も生存も奇跡的に維持されていた
白の国から贈られた、壮大な間取りの異空間の一室
それを持ってしても、そこでずっと癒えぬ傷を負い、瀕死の重傷であり続ける状態を維持されているケイトがいた
宿灘でも補修出来ない…その回復を受け付けられない不浄が、光の影響を阻害していた……ケイトの魂の心による再生すらも――皆の力をどれだけ合わせても、尽くしても…不浄が、傷が、拡がらないようにするのみで、手一杯だった
9月6日、9月7日と…何度も、何度も……心臓が止まり、機械音が鳴り響くことが何度も続いた
そこに―微かな光明が齎された
9月8日
朝8時
隊長「………
(そうか…
原初の神々の同意を得た
今から連れてゆく)←無線で伝達する
……←無線を切り、フィンを見つめる
状況を打開する、二代目原初の始祖神様を回復する手段がある
…身に付ける気はあるか?」
フィン「…←ベッド際の椅子に座ったまま、ずっと傍らでケイトを見、その手を握り続ける(心配気な表情で、心労が重なってかやつれた顔で、なおも一心不乱に化身化の力を送り込み続ける)
!←瞠目し、隊長を凝視する
…あるの?
隊長「ああ
時間もそんなに無い
来るか?
フィン「行く」
ほとんど眠れず、いつ死んでもおかしくない状況に
やつれ、働かない頭で即断した
藁にも縋る想いだった
そうして…ある星へ連れてこられた
天の国
天神星(あまがみせい)
ライオウ(雷王)
その星長がいるという神殿、その中心の部屋へ通され、案内された
ゴロゴロゴロゴロ
雷鳴が轟く中で…
中央に鎮座した
年老いた細長い白い龍神が
雷を纏いながら叫んだ
龍神「何用じゃ!!!?」
大気の渦と雷が起こり荒れ狂う中…
龍神「む?
なんじゃ
原初の滅神様でおられましたか