第93章 深淵(しんえん)
帰ってきたのは8月17日の昼でのことだった
悪阻(つわり)が激しくなってきて、立っていたら吐くので
布団に座ったまま、あるいは横になったまま、過ごさせて貰っているのだとか…
目を覚ました僕へ、ケイトから頭を撫でながら言われた
あまりに心地良くて二度寝していると
おやすみなさい、と唇を唇へ落とされ
そのままケイトも壁にもたれ掛かり眠りにつき出した
このままの体制だと少し不安だったので
少し持ち上げてから、布団に横たえ、共に抱き締め合って眠った
今の季節柄暑いけれど…それ以上に心地良かったのか、安心したように笑い掛けられた……
それに僕も安堵し…目を瞑ると…もう夜になっていた
神話の光景を今一度見んと、目に収めんと多くの方々が押し寄せていた
実際に再現されたのは、無惨を倒してから後
自力で御屋敷へ帰ってくる場面だった
自分の足で…ここまで来た
自分の足で…帰る
その言葉と共に――
倒れ伏してからのやり取りも再現されて―――
8月16日まで掛けて、
ちゃんと最後まで描き切ってくれたお蔭で…
皆が皆、楽しんで笑っている
こちらの世界では7月22日からになるのかな?
そんな想いに駆られる中、暗闇を照らす側の人々を見やると…
子孫の真似っ子(コスプレ)をする方(子供)もポツポツ居た
どうやらうまく軌道に乗っているらしい
楽しそうに、満面の笑みを浮かべて手を伸ばすそれに…その光景に……僕は笑った
ケイトも…それを感じてなのか、嬉しそうに笑っている
フィン「こんな平穏な生活がいつまでも続くように…
祈るばかりだった……
身投げと癌一同の入れ替えが無事完了したこと
もう閉じ込められて削られ続けることはもう無いこと
それらは既に伝わっていた…化身来華の世界では……
他の世界ではどうなるかは分からない…パラレルワールドというやつだからね……
………)
どうか……
皆が…
幸せで満ち足りた未来になりますように――」
その思いに賛同するかのように…
強く光は瞬き、場を大きく包み込んでみせた
ケイト…安心していいよ?
僕達は…皆は…
君の味方だからね?
皆で…明日を切り拓こうね?
どんな辛いことがあったとしても…
共に――生きよう
――これからも…遠い先も、ずっと!