第93章 深淵(しんえん)
アルバート「人は過ちを犯す生き物だ
だが、繰り返さないように出来るのもまた人なんだ
それを怠った時から…腐敗していくんだ
同じ過ちを繰り返さない為に、次があるんだ
だから背負う
そうして人は成長してゆくんだ」
その場に膝を付いて目線を合わせ、頭を撫でる
アルバート「忘れてはいけないよ――?アイズ」
アイズ『うん…忘れないよ』
目を細め微笑する
その視線の先は…ケイトだった
その魂の分体、それが…アルバートだった
長男の名前がアルバートの理由もまた、そこに繋がっていた
長女の名前がディッグなのもケイトの母の名だった訳だし
(子達の来訪、944,958ページ参照)
次男、次世代の精霊の森の守り人となるウルの名(王という意の言葉から取った)は僕が付けさせてもらったが…
次女の名はケイトが決めてよいとして、精霊王のじっちゃんの名グランから取って、グラと名付けていた
あの頃から…既に、定められた運命だったのかもしれない……
いや…もっと前から……僕達が生まれる以前から、既に…定められた理だったのか
侑子『全ては必然――定められし理の中で進められる物事、紡がれる物語よ』
その突如降ってわいた声に…僕等もまた、頷いた
スタンピード
では無く
パンデミック
大感染と呼ばれるそれは…
あるボスモンスターが迷宮内の全てのモンスターをゾンビ化させ、全てを死なせず永遠に全てが死に絶えるまで攻撃を続けるという鬼畜過ぎるものであった
そしてそれは人間にも感染し、その毒液を被るだけでゾンビと化させて人を襲わせるという
それを祓った奥義…それが――
アルバート「グレイブノヴァ」
謹厳な新星
それすなわち…始祖神の力を、分体として出した際の御業だった
剣を縦に構え、刃に右手を添えて解き放たれた光が、
迷宮の蓋となりて外への侵入を止め、全てを浄化して清浄な存在へと置き換え、消し去っていった
迷宮の最奥に至るまで…
その全てを――
それは伝説として書き残されていた
検証してみた所、その御業も使えなくなっており
攻撃系の技、御業は全て使えないと見ていいようだ
逆に言うと、攻撃系を除く全ての業は使用可能とのこと
『身を守れる力を亡くす』とは文字通りそのままの意味であり
攻撃を防ぐ行為が一切取れなくなった点を指す