第16章 悲鳴
呪詛は状態異常とは違う。
状態異常とは別のそれとして、冒険者を蝕む。
どのような屈強な冒険者でも、『呪い』には勝てない。
精霊寵愛のそれでさえも無効化する不治。
闇派閥でそんなやり取りがあった頃、ホームでは怒りを隠せない人がいた。
アイズ「…」ぎりっ
拳を強く握り締め、震わせたまま彼女は歯噛みしていた。
脳裏によぎるのはケイトが語った言葉。
ケイト『自分がいたら…皆、嫌な思いをする』
不干渉を貫き、それ以上の傷は決して増えないように努めた。
現に成功している。でも周囲は悪いと過剰に言い続けている。
ロキ「確かにそう言うとったわな。
せやから、街の人達にはこう言ったんや。
『周囲は何度も何度もやってきた。
毎日続けられた。関わっても声をかけることも許されなかった。
何度も何度もそうされる内…声を出せなくなった。
余程のことがない限り、声をかけようとすることさえもできんようになった。
周りに強要されていく内、一人きりの環境で誰にも話せんまま抱え込み続けた。
結果として…周囲が何かで困ってた時には助けようとはするが、それ以外では何の関わりもない状態となった。
理解者もできんまま、周囲で悪い奴やと罵られる中、全部一人でできなあかんと思ったんやろ。
せやから人に何かしてもらうと、果てしない申し訳なさと恐怖に繋がるんや。
また、また、ああされるってな…
だからケイトは、大したことでなくってもあんなに感謝する。謝罪する。
でもって自分を殺そうとする。人を傷付ける方が怖いから、人を殺すぐらいならそっちの方が楽やからな。
…で、ああいう風に閉じ籠って抱え込むんや。
嫌なことあったら普通は話せる人もおる。
でもケイトにそれができんよう追い込み続けた。
一人きりになって心が壊れるように、声高に叫び続けた。
あることからないことまで叫ぶ。でもって自分はいない方がいいんやと思い込むよう洗脳していく。
その上で自分は悪いことないと叫ぶ。
人の人生弄んで、人が一人きりになって、優しさや純粋さ故に、自分への価値観が狂っていくのを見て声高に笑って笑って…どっちが悪人や?
ほざくな!』
ってな。
そしたらなんて言ったと思う?
自分は悪くない、そういうことをするケイトが悪い、化け物なのが悪い。
悪いのはケイトの一点張りや」