第92章 新たな神武(しんぶ)
ケイト『ぶーぶーぶーぶー』
『やかましい』ぴしゃり
折角強くなったのに~
とぶんむくれるケイトに、頭をポンポンと優しく撫でた
宥めて落ち着いた頃
ケイト『ナビィ…お前の好きだった曲だ』
オカリナを取り出して吹く
と同時に…
自然の背景と共に、歌詞が流れる
『山のせせらぎ
大樹の導(しるべ)
時の果てへ流れ行く
共に生まれ育まれやがて道となり
永遠に子に孫に残さん
絶望を乗り越え希望は廻り
永遠に、共に…誘う
そしてまた…時(命)は芽吹く
(背景に、木が芽生える場面が映る)
共に春を越え虹を渡ろう
夏を生やし秋を肥やし
冬へ眠ろう
そうして僕等はまた出逢う』
守り人は皆歌える
共に生きる
という感じだった
優し気なメロディーが風に揺れ、静かに響いていった
オカリナから口を放し、再び言葉を発する
ケイト『守り人の方が、動物達の方が理性的だった』
2599ページ参照
3352ページ参照
ケイト『悪事をするものが生きやすいこの世で
人としての真価を問う、試し鍛える造りとなっている
人の守り人は…自然を捨てて、人へ寝返った
あくまで森側としての主観だ
だからと言って…
赦せと咎められる謂れも無い
自然から脱し
自らの手で壊し
自分好みに歪めた
それが人のした過ちだ
自然に勝てるのだと
自由に、自分にいいように出来るのだと
方々の意志を無視し
全てを自らの奴隷とした
欲のままに生き
恵みへの感謝も忘れ
自らで作れるのだと過信し
傲った
そのモノらの末路なのだと
涙を流した
始祖神が
初代が涙を流すのも…
始祖神の涙という神域なのも……
そこにある――
恵みは、自然は、決してひとりでは作れない
資源は無限では無い
有限であって、あって当然だと湯水のように使えば
無くなってゆく
再生も待たず、勝手に資源を見出し
荒らし、壊し、弄び、動物達を追いやり
自らにとって都合のいい地を作り、全てを害した
…………
力を抱いた守り人が
ヒューマンに流され、傲り
加担した
それが……人間から守り人が生まれなくなった理由だ
神域から人間を追い出した理由だ
人は死ぬ
動物は死ぬ
それは決して変えられぬ定め
それを理解し
共に生き、育み合い、成長となすこと
そこが肝心なのだと――