第92章 新たな神武(しんぶ)
精霊の森――
『精霊王の森の守り人』
その者が生まれる際、必ず供となる、『対となる存在』が同時に生まれる
その性格は…異なるとして、似ているとして……共に生き、共に死ぬ…言わば『分身』となるもので在る
しかし…その『己が分身たる精霊』は――
一度喪えば、二度と手に入ることも無く、共に居ることすら敵わなくなる―――
生涯、一度たりとして…魂の一生に渡るまで――――
だからこそ――その精霊は、主護精霊でも無く、供でも無く、『片割れ(かたわれ)』と呼ばれた―――
10年前…
ケイト「ナビィ!」
ナビィ「ケイト(リンク)!」
羽の生えた光の玉
それは…祖父も、母も、持っていたものであった
その精霊は命を分け与え、どんな状態をも回復してくれる
その生命力は時間と共に回復し、本人の成長に合わせて大きくも小さくもなる
老化もするが、余った分は蓄えて大事にストックし続けている
それは…『守り人』として生きる故の支えとなっており、精霊神が直々に遣わした
精霊神の森の中央に鎮座してある、世界が生まれてから常に在り続けた世界樹から産まれた…神聖なる『片割れ』である
精霊王の半身とは言え、死なれては困るという考えから遣わされた存在であった
それにより守られており、そのお蔭で人体実験等の酷い目に遭わずに済んでいた
『片割れ』の持つ力は、生命力を分け与えることでは無く、『誰かに悪用されたりせず、好き放題にその命を弄ばれない為』に、与えられたものだから
母から『次期守り人となる子(精霊王の半身)』が生まれる際、光と共に十字架(精霊王の骨)が与えられる
それと同時に、『片割れ』となる光る精霊が生まれ、十字架が与えられた赤子に贈られる
その現象はギフト(贈呈)と呼ばれ、精霊神と交わる唯一の機会であり、神聖な時間とされており、悪しきものや邪なものは近付くことすら叶わずにいた
下級精霊が光の玉であるのに対し
片割れは下級とは言え、光の玉に1対の羽が付いている
そして――それを補佐する為の精霊と契約させられる
物心つく前から契約していた下級精霊――すなわち…ノアールである
ノアールは強化が得意で、色々と力の制御を補佐してくれていた
主に日常生活用に抑える類のものを
片割れは、一緒に力の比べっこで能力の向上をし合っていた