第16章 悲鳴

そこまで考えを整理した後、彼女は再び溜息を零した。


リヴェリア「…殺したいと思わない私は異常なのか？」ぼそ

思わず呟いてしまった言葉、それを拾う者が一人いた。


ガレス「相手にせん方がいいと人には言っておいて気にするのか？」

リヴェリア「……いや、もはや詮無いことだとわかってはいる。

わかってはいるんだが…どうにも、腑に落ちなくてな」

ガレス「人間というのはそもそも矛盾だらけのもんじゃろうが。

気にして落としどころを見つけようとした所で、それで解決するような安いものではないわ」

リヴェリア「！…そうだな。

済まない。愚痴っぽくなってしまったな」

ガレス「街の輩は自分が悪いことをやっとると認めたくないだけの駄々っ子よ。

子供程度の浅慮しか持たず、押し付けで何でも思うような方向へ行かそうとしおる。
はっきり言って、あいつらを人として見ん方がいい。

子供じゃと思え。ただ自分のそれを通したいだけの、な」

リヴェリア「なるほど…確かに一理あるな」

ガレス「あいつらは自分にとって都合のいいものしか見ようとせん。
助けられていながら傷付け続けとるのがいい証拠じゃ。

あんな輩は相手にせんに限る。
たとえするとしてもガキだと思って噛み砕け。
そうしたとしても、余程のことがない限り受け付けようともせんじゃろうがな（溜息）

あんな厄介な輩に囲まれながら、よく生き残った。難儀にもほどがあるわい。
誰にも護ってもらえんまま育って、よくあれほど素直に育ったもんじゃ」ぶつぶつ

リヴェリア「…怒りは湧く。
湧くには湧くんだが、殺意までには至らないんだ」

ガレス「それじゃからどうした？
ケイトのことを大切に想っとることには変わりないじゃろ？
わしだってそうじゃ。

フィンの場合は特別だからこそ起こり得たものだと考えい。頭回せ！」

リヴェリア「そうか」

ガレス「第一、惚れた女子にあれほどきつく当たられて、挙句の果てに記憶が飛ぶほどひどいことをしたんじゃ。
殺意が芽生えて当然よ。

街の輩は、ケイトとは違って聖人じゃない。期待するだけ無駄じゃ！
そこだけ把握しておけばよい。怒りなど二の次じゃ」

リヴェリア「微笑）ふふっ…

感謝する。視界が晴れたようだ」

ガレス「お主らエルフは小難しく考え過ぎなんじゃ。しっかりせい！」ふんっ

リヴェリア「ああ」