第16章 悲鳴
リヴェリア「ただ、傷はまだ癒えてはいない。
一歩前進といった感じのようだ。
まだ油断はできない状況には違いない」
フィン「そうか…それだけでも十分だ」がたっ←椅子から立ち上がる
リヴェリア「意識はまだ戻ってないぞ?」
フィン「それでも行く。こんな時こそ彼女の傍に居たい」
リヴェリア「…そうか。留守は任せておけ」
フィン「済まないが頼むよ」
そう言ってフィンは去っていった。
残された彼女は一人、溜息と共に愚痴を零す。
リヴェリア「…非道か人道、か…
非道を貫き続けた街の人達など、擁護されるべき立場ではないというのにな(溜息)
人の悪い点を見るのは、些か気分が重くなる」
どちらか正道かなど、火を見るよりも明らか。
愚突猛進が彼女に出ている時点で、それは証明されているも同然。
一方的に多人数で寄ってたかる街の人達に対して責めず、自分が悪いのだと背負い込み、不干渉を貫くことで干渉していれば得ていたであろう『未来にあるはずだった「新たな傷」』から護り続け、
10歳まで父親からの暴言と暴力を、母親からのヒステリックな風当たりを、街の人達からの一方的な暴言やいじめに伴う傷を、その全てを一人きりのままで背負い続けた。
常人ならば容易く潰れ、自殺していただろう。だが彼女は生き続けることを選んだ。
街の人達を『人殺し』にさせない為、それを是としない彼女のエゴによって。
育ての家族に受け入られた後は人間らしい表情を見せるようになるも、それを是としなかった周囲によってそれさえも15歳の誕生日に奪われた。
記憶を失い、それでもなお彼等は化け物だからと責める。
死ねと消えろと来るなと、抵抗しないのをいいことに捲し立て続ける。
挙句の果てにはきもいきしょいと自分ではどうしようもないことばかり、そのような言葉だけ吐き掛け言い続ける。
それでありながら彼等彼女等は、それらを含めてそういうことをしたからだと正当化し、自分よりもケイトただ一人が悪いのだと罵り続ける。
どう見ても、ケイトの方が分が悪い。
加害者が多人数である分、そう思い込まされた。
客観的に見て、ケイトに悪い点はない。
彼女は人道的な行いだけを続けた。仕返しも一切していない。
街の人達の愚行、当人達でさえ悪いと思わない態度こそがフィンの言うように悪であり殺意を芽生えさせる。