第92章 新たな神武(しんぶ)
全ての事象には――犠牲が付き纏う
それは決して…避けられない定め
夢の中…潜り込んでみれば……
癌一同のせいで損なわれた、最後のチャンスを与える為に
3度目という最後の機会を与える為に…
犠牲となったそれらが……無駄死にだと、咽び泣いている所だった
どうにもならないよ…
シズクが愚痴を零す
自分で自分をそうしてるんだから
嘆息と共に付け加え、別世界のそれらを睨視する
奪うだけで、何も返そう(大事にしよう)とすらもしない…仇返しそのものの権化(癌一同)を―――
隠れ癌『仲直りしよう』
口々に呟き手を差し伸ばす
ケイト『殺した側が、殺された側と馴れ合おうとすんなよ
癌一同と、癌一同を除く全てが…相容れると思ってんじゃねえ』重々しく口を開き睨視
1000垓人の内、14垓人の癌一同…
それらは……全て、こちらの世界『では』消去を完了せしめた
しかし――よその世界では別だ
癌一同は皆、自分が被害者だと信じて疑わない
今もなお…変わらず99.08%も削られ再生し、常に削られ同時に再生という事象が無限に続いている……
だからこその――痛切な吐露、想いの発露ということなのだろう
無駄な足掻きに過ぎない
その為に無駄となるとわかっていながら犠牲を払う必要性はどこに?
だが…隠れ癌だと見極める上で、ついでに癌化=罪の植え付けという行為に対する免疫も付けれたら、という想いからのものだった
それもわかっている……それでも‥……
もっとマシなやり方は無かったのかと……喪わずに、誰も何も奪われずに…犠牲にされずに、乗り切る手段は無かったのかと…願わずにはいられなかった――
という想いが背景に感じられた
初代の犠牲を無駄になんかさせない――
その為に頑張ってきた…
それでも…それは……なんの意味も無いものだった
守る為に必要なのだとしても――
癌一同を除く皆を、癌化から救済する為のものなのだとしても―――
染まり切った存在までは守れない、罪を宿していない者は守れても
それが悔しいんだろう……
喪っても無駄にされる
どれだけ大事に想っても
その為に喪ってでも尽くしても守っても
無駄にされる
何も大事に等されない
その不条理が…痛ましくて堪らないのだろう
それでも大事だと尽くす初代も相まって