第16章 悲鳴
周りの冒険者が真っ青になる中、現場にいたアイズは止めようとしたが止まるわけもなく
元イシュタル・ファミリアの冒険者であるアイシャを筆頭とした10人以上のアマゾネス達、彼女等はベートに叩きのめされた。
勝負が決まってもなお、アイシャの目から闘志は消えていない。
その様子に、ベートは口端を上げて笑いながらその首を右手で締め上げ、止めを刺そうとした。
が
アイズ「やめて」
デスペレートを抜剣と共に、背後から首元に突き付けた。
そのアイズの両目には冷たい光しか無く、
その様子を見たベートは毒気を抜かれたように締め上げていたアイシャの首から手を離した。
喧嘩は終わった。降りかかってくる火の粉はない。
だというのになおも傷付ける彼の行動が、その意図がアイズにはわからなかった。
ケイト『ベートはただ口が悪いだけのいい人だよ!』←466ページ参照
ケイトの言葉を信じたかった。
ベート『…今度、飯奢ってやる』←485ページ参照
一時でも、そう思いかけた。一目置いた人には特に優しいのかと。
ケイト『……あり、がとう…』←532ページ参照
あんな言葉でも、何か意図があるのかと。
それでも目の前の現実は違う。
この行動は、決していいものではない。許される行動でもない(ぎり)←拳を握り締め歯噛みする
解放されて咳き込み続けるアイシャを前に、眉間に皺を寄せながら…問うた。
アイズ「何で…人をそんな風に傷付けるんですか?」
しかし彼は何も答えない。目を合わせていながら、何も言わない。
傷を押してアイシャのもとに駆け寄るのを脇に、見つめ返しながらはっきりと伝えた。
アイズ「私は…ベートさんのそういう所が、嫌いです」
ベート「…はっ。そうかよ」
その言葉に対して彼は鼻で笑って「興醒めだ」と言った後、有り金を店長に投げ渡して去っていった。
去る間際、酒場中から集まる視線は今朝のロキ・ファミリアのものと同じ嫌悪の眼差しで
彼はそれを横目で見ながらも全く意に介さず、木扉を開けて酒場を後にした。
眉を下げながら悲しげにアイズは佇み、口を噤んだ。
彼女はもう、その背を追い掛けようとはしなかった。