第16章 悲鳴
フィンが金貨を袋ごと、先立つものとしてベートへ渡そうとしたが
当のベートは、自分の面倒は自分で見るとばかりにフィンへ丸ごと突き返した。
迷宮に潜ればお金など稼げるという腹だろう。
夕暮れの中、一人で彼はホームから去っていった。
時を同じくして夕暮れ…
治療院ではある者の溜息が零れ落ちていた。
僅かでも残っていれば、その浄化の力に負けじと呪詛の力は悪あがきの如く増幅する。
魔力を生み出す存在である細胞もまた浄化の性質を持っているが故か、相反する性質を持った呪詛の力は消されまいと活発化している。
浄化と呪詛の関係性は、言うなれば水と油、火と水。
現状では一時的にこちらが増したとしても、負けじと力を強めてくる。
それは浄化もまた然りなのだが、如何せん分が悪い。
一度で消し切れなかった時、そしてまた呪詛が蔓延ろうと必死に足掻く様を前に、アミッドは再び溜息を零した。
この3日3晩、一進一退の攻防が繰り広げられ続けていた。
ちょうど時刻にして夕暮れ、食事を取りつつも何度目かの溜息を零したのである。
内心うんざりしつつもあるほど執拗な呪詛という存在に、精神的にも疲れていると言える。
それに加え、例の呪詛を解呪する薬もまた同時並行で作っていた。
点滴の解呪に対する鑑定と、黒い大剣に宿る呪詛をもとにして
呪詛に対する解呪薬を作りつつ、有効性を確かめる為ケイトにも使用していた。
しかししぶとい。ゾンビよりもしぶとい。
生命力が凄まじい。彼のゴキブリなど目じゃないほどに。
「やれやれ、やっと居なくなった」と思えば、まるで「呼んだー?」とでも言うかのように次々に増えていく。
それを前にした時の怒りもまた、想像を絶するものであった。
そして、その次に何より彼女を苦しませているものがある。
「アミッドさん、またロキ・ファミリアの方が」
アミッド「またですか;はああ;」溜息
疲れがピークに達している今の状況では、彼等彼女等もまた邪魔となる存在。
よって…
アミッド「今から1週間!ケイトさんへの面会依頼は禁止です!!
治療や護衛に協力して下さっている方や夫であるフィンさん以外は禁止です!!
わかりましたね!!?」ビシャーン!!!
文字通り雷が落ちた。
彼女の怒りは爆発し、面会依頼自体を禁止とされたのであった。