第16章 悲鳴
彼にとっては激励。
『ふざけんな。こんな所でやられそうになってんじゃねえ。
無駄死にじゃないというなら、違うというなら吠えてみろ。
そんなもの(呪詛)、捻じ伏せてみろ!』
霊感があるからこそその彼の意図と気持ちを感じ取れた彼女。
ないからこそ、そのままに侮蔑として認識し、受け取ってしまう周囲。
その差によって周囲から彼は理解を得られず、今回の件で理解しようという気力さえも削がせてしまっていた。
他からしてみれば、死に掛けの家族に侮蔑の言葉を吐きかけただけに過ぎないのだから…
結果として、団員達とベートとの間に溝ができ
そういった認識の違いから、隔たりとなって先程の事態へと陥ってしまった。
そうして朝のやり取りを皮切りに、怒りを通り越してないものとして扱われるようになり、言動を曲げなかったことで深い禍根を団員達に残した。
リーネやレフィーヤがベートへ話しかけようとした矢先、アキやティオネとティオナに腕を取られて連れていかれるほどに…
というのが事の全貌である。
闇派閥の目的は、迷宮都市オラリオの壊滅。
例の人造迷宮は、地図に基づいた調査によって地下水路にも繋がっていることが判明。
そこからモンスターフィリアの際に食人花が出されたのだと発覚。
ロキ・ファミリアは、遠征での人造迷宮クノッソスの後始末に加え
さらに先日フレイヤ・ファミリアによって襲撃、潰されたイシュタル・ファミリアの情報収集に追われていた。
夕飯は団員達でそれぞれ取るよう指示が出されていた。
が、ベートが現れれば目を逸らして離れ、無言の拒絶を示して去っていくという状況下で食べれるほど彼は鈍感でもない。
それから後の夕暮れ…ベートはフィンから暇を出された。
怪人が率いる地下組織、闇派閥の残党、その二つに対して足を揃えなければいけないこの時期に、仲間割れしている場合ではない。
フィン「ベート。あれでは僕達も庇い切れない」
かと言って、庇い立てすれば反感が自分達に向いてしまう。
そうすれば士気に大きく関わるし、上述したように戦いを控えた今の現状では避けるべき事柄でもある。
結果として、ベートは暇を出され
団長として下した指示は、「ほとぼりが冷めるまでホームに帰らないこと」だった。