第16章 悲鳴
一度はケイトの言葉によって、周囲のベートに対する評価は変わりかけた。(465,466ページ参照)
それよりも後に呟かれた、『きっと指摘されずに行使してばかりだったら、きっと使いたい時に魔力が足りなくなって後悔してただろうから』というケイトの言葉も相まって。
そして…あの圧倒的な強さ(471~475ページ参照)を目の当たりにして、彼は心を開きかけた。
復元という死者を蘇生させた力もまた体験したことで、少しずつ…
そう簡単に死にはしないだろうと心を許しかけ、気付けば一時の感情のまま食事を奢ろうとするまでに。(485ページ参照)
ケイト『天変地異が起きたぞおおおお!!』
ベート『どこにだゴラァ!!・・』怒
ぎゃーぎゃーと騒がしくも楽しい空気に、彼女の自由奔放さに振り回されつつも…僅かに、彼はその中に幸せを見出していた。
だがその日の内に変化は起きる。
その彼女でさえも、死に掛けている。
それを前にして涙ながらの叫びが続く。
ベート『ああ…またか』
胸によぎったのは、そんな短い一つの想い。
しかしそれは、昔から味わい続けたものであると同時に、『傷』だった。
この世界はどうしようもなく残酷だ。
弱き者は強き者に何をされても文句は言えない。
弱いままでは強者に奪われ、殺され、失う。
嘆いても、憂いても、失ったそれが蘇ることも戻ることなどもない。
泣いても、叫んだとしても、元通りになど戻らない。状況が好転するなど断じてない。
それが、ベート・ローガが見てきた世界だった。
そして彼自身、たくさんのものを奪われてきた。
ベートを可愛がりつつ厳しく育てた両親も、ベートが護るべき者と定めた一人の妹も、ベートの家族になるかもしれなかった幼馴染も、
ベートを愛し、またベートも愛そうと思った恋人までも…
皆、呆気なく死んだ。
心を許した者ばかりが死んでいく。自分一人を残して消えていく。
そしてまた…目の前で、真っ直ぐにぶつかり慕ってくる女性も失いかけた時
気付けば口をついて出てきた言葉が、それだった。
一見すればただの侮蔑の言葉。
しかし、その裏に隠されていた意味は…
負けてんじゃねえ、たとえ死しても生まれ変わった後ももう失うな。
彼女には通じた。隠された意味もまた受け取った。
が、他は違う――