第15章 人造迷宮
ラウル「ダメっすよ…ダメっすよ!こんな所で死んだら!!
やっと…やっと、これからじゃないっすか!;
報われるのはこれからじゃないっすか!!!
死なないで下さい!!死なないでっ;;」
左の傍に寄り添いながら、ボロボロと涙が零れ落ちていく。
その涙は私の目にも入ってきて、潤ませながら頬を伝って、また、零れ落ちていった。
思いも寄らない言葉がかかってきたのは、その時だった。
ベート「はっ…ざまあねえな」
『!』
ベート「どんだけ強かろうがLv.7に至ろうが、てめえは雑魚だ。
現に足手纏いになってるだろうが」
その言葉は侮蔑、それでも…違うって吠えて欲しいように望んでるよう感じた。
ベート「これからてめえは無駄死する。
なあ、おい。今、どんな気持ちだ?
どれだけ帰りたいと望んでも帰っちゃこれねえ。
オッタルとの戦いの時とは違う。傷も塞がらねえ。血も止まらねえ。
てめえの甘さとてめえの弱さ、もう忘れねえように死ぬほど呪え。死ぬほど恥じろ。
ダセェ死に方でくたばった、この後もな」
ラウルの涙が止まった。
今にも泣きそうな呼びかける声が、彼の声によって次々に止まる。
静寂の中でベートの嘲笑だけが馬車の中で響いた。
その場に居るほぼ全てが、ベートを仇のように睨んだ。
涙を流しながら眉間を怒りに歪めた。
間近にいるアイズもまた、眉を逆立て立ち上がろうとして…動きを止めた。
侮蔑に歪むその瞳を見て、最後に呟かれた言葉を聞いて…掌を叩きつけてやることができなかった。
ケイト「……ぁあ…そうか」ふっ
当の死の匂いが色濃い彼女は消え入りそうな声で呟き、口端に笑みを浮かべ…彼の意図を、確かに受け取った。
彼は…本当は……死にゆく人を見たくはないのだと、薄々感じ取った。
都合のいい解釈かもしれない。それでも…そう感じてしまった。
『無駄死にしたくなければ、無様な死になりたくなければ、是が非でも立ち上がって吠えてみせろ。生き残ってみせろ』
そう言っているように、彼なりの激励に聞こえたのだ。
ベート「そのまま勝手にくたばってろ。二度と俺の前に現れんじゃねえ。二度と、巣穴から出てくんな」
眉間に皺を寄せながら侮蔑の表情で笑ってみせる彼は最後に一言放った。
目も逸らさず、真っ直ぐに私の両目を見下ろしたまま。