第15章 人造迷宮
フィン「恐らくグレイロアとは、彼の勇猛果敢なそれを忘れまいと苗字にしたのだろう。
ケイトが以前、教えてくれたように。←207ページ参照
彼の雄姿を忘れず、今ここで生きられている理由も忘れない為に。
これが…勇者アルルェーチェの全てだ。
君は、いずれにせよ…神の因子を引き継いでいる。
何千年もの時を経て血は薄まったかもしれないが、隔世遺伝で君だけ有してしまった。
ロキはホームに訪れてきた街の彼に話しかけて握手を交わした。ワザと血を指先から出しながらね。
ヘレイオス街に滞在していた時も、生き残った人達に対してやっていたらしい。
ロキ『おっと、スマン!血が出てたの忘れとった!』
そう言いながらハンカチで拭いた時…彼は全く痛がらなかったそうだ。
決定打となったのが、君の魂の道筋を読み取ったあの時だ。
神の力を使ってはいけないという禁忌を破ってはいないが、魂の中を覗き見るというのは黙ってさえいれば限定でできるらしい。
そんな抜け道を使うのばかりロキはうまいんだけどね」
片目瞑りつつ苦笑し、腕組みをしたまま溜息を付いた。
どうにもロキに振り回されている気がするけど…神の意図まではどうにも読み切れない。
フィン「あの花畑の傍にあったアルルェーチェという森、岩を宿した鉱山、ヘレイオスという街…地理的にも伝承的にも全て当てはまっている。
下級精霊が君の前に姿を見せ、物心つく前から寄り添っていたのも、それ(血筋)でだったのだろう。
ロキが言うには…龍神の関与の有無にも拘らず、いずれにしろクリエイトという魔法を先天的に有していたことに気付いたそうなんだ。
まあ…龍神がやったことは怒りの波動を送ったぐらいで、それが原因で封印が解除されたらしい。
あのヘレイオス街の悲劇は、それによるものだ。
いずれにせよ長年の時が流れているから効果は弱まっていたこともあって、封印が切れるのもそれこそ『時間の問題』だったんだが、早めてしまったことに変わりはないそうだ。
とにもかくにも…膨大な魔力の器、クリエイトという魔法を有していた。
そして当人は害意を持たず、その魔力は浄化する性質を持っていた。
龍神様起因で得た力は…『龍の力』だけだったというわけだ。
それにしても…ゼウスの血を引き継いでいるとは思いもしなかったけどね。
いや、血というよりは因子か」