第15章 人造迷宮
彼は神の因子を受け継いでいた。
4分の1でありながら神の血までは受け継がなくとも、『クリエイト』という魔法を宿していた。
だがペルセウスの子等の中でも彼等彼女等とは違って誇れるほどのものは何もなく、唯一あるとすれば『人を殺せぬ優しさ』のみ。
争いごとや血が流れることを何よりも嫌い、傷付けるにしても迎撃して気絶させる以上のそれは決して望まなかった。やろうともしなかった。
そんな彼は大した名声も上げられず、王という立場のみでただただ善政を築き続けたというだけ。
だが領民は全て、彼を慕っていた。それだけが…一番のものだと誰もが語っていた。
しかし彼の身体は血が故か老いを示さず、『クリエイト』という魔法を生まれつき有していたことに晩年になってから気付いた。
彼には動物の思いが聞こえた、霊が見えた、その声を聞けた、聞かずとも感じ取れた。
フィン「ここまででわかることはないかい?」
アイズ「ケイトの、霊感?」
フィン「ああ、その通りだ。続きを話そう」
人の感情を感じ取れてしまう彼は、増えに増えすぎた領民によってたくさんの感情が雪崩れ込んでくるようになったことに苦しんでいた。
晩年まで耐えていたが、次の領主は自分だと言い張る人が出てきて我先にと争い出した。
争い合う身内に、彼は一人を領主と決めて去っていった。
人の柵(しがらみ)に嫌気がさし、安寧の地を求めて出ていくことを決めた。
その出ていった旅先で、彼は精霊と出会った。精霊の地もまたモンスターの魔の手が及びかかっていることを聞いた。
そして彼は飛び出していった。精霊の暮らす地に、精霊に導かれるまま。
その地の名はアルルェーチェ。精霊の楽園だった。
そこはモンスターがまだ及んでおらず、人間達もまたそこに逃げ込んでいた。
彼はそこを護る為、必死に剣を振るい護り切った。
傷を負ってもなお倒れず、モンスターの灰に塗れながらも戦い抜いた。
強大な敵、無数のモンスター…それらを前に一歩も引かず、懸命に戦い抜いた。