第87章 神化(しんか)
簡単に言うと…ケイトは「癌」に手玉に取られた
「無責任に何でも好きにして、後始末や皺寄せで自らを大事に想う人達に犠牲を強い、暴走を繰り返し続ける迷惑集団」と化した「癌と隠れ癌」
それを止めるものは、誰も居なかった
いい人だと、そう思いたいから
大事にすることが間違いだと、思いたくないから
その思い込みを利用し、思考に蓋をさせて、手玉に取るのが、「癌」のやり口だから、常套手段だから
主犯格の―――最も得意な、十八番だから
「消えてしまわなければ――全てを消してしまう始末に終えない存在」だから
ティオネ「団長?何を考えているんですか?」
フィン「いや…何でも無いよ」
嫌気が差してしまわないか…心配だ
どれだけ自我を削ったとして、記憶を削ったとして…僕等に出来るのは……
甘んじず、出来る行為で返すことぐらい…誠意を示し、礼を尽くすことぐらいでしか、返すことは出来ない
しかし…原初の始祖神が望んでいるのは……
自由―――
膜の外に出て、自由に遊びたい…皆と一緒に
分体ではなく、ありのままで、魂の本体のままで…
ずっと、待って、待って、待ち望んでいた…←笑顔で手を伸ばすケイトが写り込む
しかし……←ふと突如手が空を切る
それはどう在ったとしても、現実にはなり得ない
なったら…全部消えてしまうから……
(その実態も何も)知らない者達から、コケにされ続けられる始末しか…何も無い←孤立し周囲から好き放題に言われ俯く、顔が見えないケイトの姿が浮かぶ
どれだけ頑張っても…どれだけ削っても…どれだけ……←何とも言えない、切ない表情のまま天を見上げる
自我を失おうとも、想いも何もかもを削り続けたとしても…喪い続けたとしても……大事に想おうとも←目を瞑り、痛みに耐えるかのように歯を食いしばる
喪わせなければ、削らせ続けなければ、実在出来ない存在であると、そうわかることも無いままに…あって当たり前とばかりに、嗤われ続ける以外無いのだから……←全てを諦めた無表情な顔を黙ったまま向け…死んだような白く濁った目で、澱んだ瞳で、ただただ見つめる
今思えば…ウレイオスは…初代原初の始祖神は、どれだけ笑おうとも、常に無表情でいた
『大事に慮ってくれる人々』を除く者達の前では
それは全て――仇返しだから