第87章 神化(しんか)
癌が善人だという思い込みに染まり切らないでいられたのはルーカのお陰、と言っていたが…←4895ページ参照
女神フォボス、リヨンの存在も大きいように感じた
その成仏していった方々の中に…←4078~4080ページ参照
2人の姿があったから――
心配そうな表情から一転して…守る為に怨霊となったことから打って変わって、もう安心だと心底安堵した笑みを浮かべていた――満面の笑みを浮かべて、天へ昇って、去っていった
ありがとう―――――
そう…深い感謝と共に……
だから…涙が止まらなかったのだろう……
だから……嬉しさが溢れて…幸せだという想いが、大好きだという想いが…止めらなかったのだろう……
お互いに――――――
同じ想いを有し合い、抱き合い、大事に想い合っていたからこそ…
想いが、温もりが、通じ合っていたからこそ……
起こった現象だと、僕は思っている
だから…ケイトと会ってから、僕も「小人族の癌」を忌避していた
ケイトのお陰かな…
いや、恐らく……リヨンが守ってくれていたのだろう……
ケイトの大事な人は…リヨンにとっても、大事な人だから……
そう感じる
前置きが長くなってしまって済まない…
だが…大事な話のようにも感じて、伝えずにはいられなかった
ケイトにとってリヨンは…実の兄、お兄ちゃんのような大事で大好きな存在だったらしい
そして――それはリヨンも同じだったという…それこそ実の妹のように
一人っ子で、両親と祖父母に先立たれ、曾祖母だけが家族だった
血筋故に街の人達から忌避され、独り身だった
それを引き継がせない為に、力をもっと磨く為に、精霊の森にも入れず精霊から教えも受けられないからという理由でオラリオへ行った
そんなリヨンだから…ケイトも兄として慕っていたし、尊敬していた
本来なら対人恐怖症と男性恐怖症を患っていたはずだが…
こちらの世界で男性恐怖症になり切れずにいたのは…それが発露だ
対人恐怖症のみに留まっていた…記憶を失っていても、取り戻しても……
リヨンの墓は、ヘレイオス街の外れの方にある
ケイトの母と姉、義父母と義妹の墓から程近い場所に…
近しくて慕っている人しか入れないようにされており、聖域にもなっていた
リヨンが死んだ時、ケイトは三日三晩泣きに泣いたそうだ