第87章 神化(しんか)
ケイトにとってフォボスは…その女神は…
安心した場を与えてくれる女神でもあり、鍛冶の最初の師匠でもあり、掛け替えの無い、自分によくしてくれた、優しくしてくれた、高く評価してくれた、大事にしてくれた、大恩ある恩人だった
滞在している間に、出来ることは全てやった
恩返しも勿論やった…
言われるまでもなく、肩もみやマッサージが得意だったから修業の合間を縫ってやった
採取した鉄を運ぶのも手伝った、品質ごとに選り分けるのも全て…今後の為になるからと、自ら率先して
ケイト『居場所(拠り所)をくれて…ありがとう』
心身共に安心したような安堵とした表情と、微かに笑みを浮かべる小さなケイトが見えた
フォボス「よせやい!くすぐったい!!^^」どばっしぃんっ!!!
どごっ!!!!
壁の端まで吹っ飛ばされていたが
ケイト「がるるるるるるるる」睨
フォボス「ヒーッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッ!^^;
ごめん…済まない;」合掌ぺこり
ケイト「もお」ふん←息を鼻から吐く
それでも…好きだった
その大恩ある女神は…ある隠れ癌がオラリオに逃げ果せる為だけに、出奔する為だけに、自ら犠牲になり、そのせいで神によって殺されて天界へ送還され二度と下界に来れなくなったというのに……肝心の隠れ癌は、花も備えもせず、大切に記憶するだけに留めている
そして――ラキア王国に、オラリオに攻め入る口実を与えてしまっている
恩に仇で返すばかりか…お供えも何もせず、笑って何事も無かったかのように過ごすだけ、やるとしても記憶だけ……ケイトにとっては、仇でしかない
『犠牲になってまで助けたいと願い動いた女神』を、「蔑ろにするばかりか、その良心を利用するだけ利用して犠牲を強い搾取するだけ、自らの欲や感情のままに暴走するだけ」
「癌としての在り方」は、その時点から既に確立されたものだったのかもしれない
主犯格の癌と出会う前から…
もう一人の、小人族の隠れ癌もまた同様だ、とだけ言っておこう……長くなるので割愛する
所謂――癌によって犠牲にされた人々の一人だとだけ言っておこう
アース王「紹介しよう。妻のメアリーだ」
メアリー王妃「よろしくお願い致します。
メアリー・アル・アンドロメダです」お辞儀
ケイト「ケイト・グレイロア・ディムナです。
よろしくお願い致します」お辞儀