第15章 人造迷宮
ケイト「邪なる全てを浄化せよ、我が名は勇者アルルェーチェの末裔グレイロア!――セイント・ジャベリン】!!」
二対の直刀を一刀のそれとし、左手に持った刀に魔力が集約される。
ティオナ「何これ!?あったかい!」
ティオネ「魔力!?それとも太陽!!?」
ケイト「ずあああああああああああああああ!!!!」
かっ!!!!!
左手に持った剣に集められた魔力を突きと共に解放した瞬間…
その空間を含め、その中にある空気が触れている中の全てに魔法が降りかかった。
その空間内の空気に触れたもの全てが対象となり、光彩陸離の白い光が瞬く間に拡がっていった。
その日、オラリオ、地下迷宮まで含めた全土がその光に数秒だけ包まれたという。
ヴァレッタ「なっ!!!」
次の瞬間…呪詛がかかっている武器が全て、腐食したかのように空気に溶けて消えていった。
それと同時に…敵のみが持つ不壊属性のもの全てが…消え去っていった。
ケイト「ぜえ…はあ……
剣よ…杖、に」
そう思いを口にした瞬間、武器は杖に代わり身を支えた。
ケイト「お父さん…お母さん…シルキー…ごめん…すまない」
金属に宿る魔力による影響でさえも、この呪詛は無効化していた。
本来なら魔力の手助けをしてくれるのだが…そんな力は呪詛にかかった自分には無理だ。
そう…あれほどの魔法を以ってしても、自身の体内のそれだけは…治すことができなかったのだ。
自らを害する。それは自身を傷付ける。悪影響を与える。ということ。
治療の力を無にする。自らの魔力に伴う魔法を使えなくする。傷を癒せなくする。
それらは、害とは認められなかった――
自らの魔力を以って身体能力を上げるにしても、それさえも呪詛は悉く邪魔してくる。
魔力に宿る精霊寵愛の力もまた治す力と判別されてか、呪詛の効果によって一切回復が進まない。
あまつさえその治療に使う魔力でさえも空振りに終わる上、呪詛に瞬く間に喰われていく。
それから程なくして、強引に全魔力を解放させて外に出し、魔操作で操ることで解呪を行った。
全ての魔力と引き換えに。周囲の魔力や足元の壁をもとに喰らって魔力として強めながら。
それでもまだ、一歩足りなかった。浄化、し切れなかった。
あと、たった一つだけ…一つの細胞に巣食った呪詛だけ残して――