第84章 竜の巣
僕が思うに…自ら進んで一人になろうとしているようにも思う……
それはきっと…
生贄として、意を一切汲まれず、想いも受け入れられもせず、勝手に生かされ、勝手に利用され、死ぬ最期の瞬間まで自由を奪われ続ける、その道が定められているからに他ならない
自分が報われないのは慣れているとは言え…原初の始祖神の1兆5000億年が報われないのは、感謝もされないのは、嫌だと思う
昔…ケイトはたった一人で、何を思い詰めてか…皆が寝入った後、精霊神の元へ赴いていた……
精霊神の森、中枢部…
原初の世界樹、最初にこの世に降臨された世界樹の根元で…
原初の世界神の分身である精霊神と、再会していた
僕と出会った際は人型だったが…←1868ページ参照
本来の姿、もののけ姫のシシ神のような鹿の形姿を取っていた…
水の上を歩けたのも木だからだ
シシ神「…何をしに来た?」
ケイト「……←真っ直ぐ見
…←躊躇したように僅かに俯き
…←瞑目し、目を伏せたまま唇を嚙み
…←意を決し、やっと口を重々しく開いた
殺して欲しい」
頭を下げ、差し出した
シシ神「生きなさい―――
自分の為に生きなさい
人の為に犠牲になることは無い…
無理をしてまで、危険を侵すことは無い
寄る辺が無くとも…想いのままに生きなさい
無理に…自分を歪めることの無いように生きなさい」
ケイト「…(瞑目震)
←目を開ける
見ないで押し付けることは、自らの魂をも歪める大罪なのに…?(震)
自分は死ぬべきだ、この世から消えるべき忌むべき存在だ
自分にとっての、自分への想いは…それだけに尽きる
なのに…?
生きろって…どうすればいいの……」痛切
途方に暮れた顔をする
迷子のように
シシ神「自由に生きなさい
あなたは…人を見ることが出来る
どれほど余裕がなくとも、そうして、受け止め、愛し、向き合い、慈しむ、大事にしようとする心がある
だから…あなたは違う
決してそうはならない…
だから…生きなさい
生きていい
あなたは…生きるべき存在
そのことに…何の変わりはない
高潔な人
最も…生きねばならない人
(ぐいっ)←頭をケイトの胸に押し付ける
汝に祝福があらんことを」
ケイト「じわっ)
…っ(ぐっ)←歯噛み
…あり、がとうっ」
ぎゅっ←抱き締める