第84章 竜の巣
そんな折、全く別の声が響いていた
ケイト『私は道具じゃない――!!』
悲痛な叫びが、煌々と…
痛々しく、響き続けていた……
脳ではなく…心の奥、魂の最奥に至るまで……
ずっとずっと隠し続けていた本心――殺し続けていた心、想いそのものだと気付いた
本当はしたくない、でも代わりがいない
だからするしかない、消えて欲しい訳ではない
自分の想いだけがいつまでも報われない、自由にもなれないし時間も与えられないし返してもらえる訳ではない、何一つとして
そういった諸々の想いの積み重ね、押し潰され掛けてしまっている
それが故の、あの爆発だった――←4880~4883ページ参照
早く死にたい…その君の想いを察知したからこそ、ああ言った
頼むから…生きてくれ、と
誰か自分を殺して――死なせて――――そんな想いの方が人一倍強い
だがその想いを殺さないと哀しませてしまう
だから…一方通行の想いを殺し、光の原動力に変える道を選んだ
共に生きたい人達が居るから…だが、それは居なくなれば死ねるのなら死ぬことを意味する
自ら…自らの意思を、心を、感情を、全てを殺す道…死ぬ道を選び、ひとり突き進もうとしている…――そんな姿が予見出来たからこそのあの行動だった
その想いは…皆も同じだったみたいだが……
生贄になれば…誰も、その想いを汲もうとはしない
報われることも無い、聞くことすら無い、動いてくれることさえ無い
味方になってくれる人等いない、誰一人として触れ合うことさえも出来ない
ただの実在化の贄として――無理やりにでも生かされ、休むことさえも出来ない、眠りに就くことさえ許されない
『己の『全ての自由と時間』を対価に、己を除く全てに『自由と時間』を与える』←4667,4683,4763,4776ページ参照
『同列として扱ってよし!』という原初の始祖神の意見、その真意を見た…←4030ページ参照
〖魂が死ぬ最期の瞬間〗まで、【全ての自由】を奪われ捕らわれ続ける
それと引き換えに…『原初の始祖神』以外の全ての『実在化』が賄われている
ケイト自身もまた…同じく、生贄にならないことを選べば…消える存在でしかない
須らく消える存在に過ぎない
そうならさせない為に…なる以外の選択肢が無い
選択肢等、他の道等…あってないようなものに過ぎない