第84章 竜の巣
盛り上がる周囲とは裏腹に、僕の心は対照的に冷え切っていた
『竜の巣』――その呼び名の原因である、アイズの心が宿った
原初の滅神の手によって作られたそれによって…周囲は落ち着きを取り戻せず、アイズの制止をよそに胴上げを敢行し続けていた
困惑したような様子で、受容するしかない中…僕は自分の気分を落ち着かせる為に考えを纏めることにした
「癌」となる人は、「癌」になるべく本質を抱いている
人にどうこう出来る問題でもないし、本人にもどうしようもないものでしかない
つまり…本当に、どうしようもないのである
その本質とは何か――心である
心とは…性根(しょうね)
本性を言う…
外面といった殻(がわ)(目に見える形)ではなく、軸…中心の方だ
「癌」の本性、本質は――「自分の感情、欲望任せに全てを歪める業(ごう)そのもの(人を見ない無理強いそのもの)」
人を見てさえいれば防げる内容だ…どれもこれも
無自覚型ならば…
だが自覚型はわかっていて破りたい放題に破り、裁かれないように立ち回る
人を犠牲にしながら…意図的に、自覚的に
だが無自覚型の癌はその自覚が無いから止めようがない、本来ならばしないだろう優しさを持っているとしても
自分を大事にしようとする人達から犠牲にする行為を止められないし、やめられない…
ましてや指摘されようものなら断固否定し、善であり正しいと凝り固まる
人を見ないから、だ。避けようも無いと評したのはそれでだ
「自分の感情、欲望任せに全てを歪める業(ごう)そのもの(人を見ない無理強いそのもの)」――これを悪と断じない限り、未来は無い。訪れない!
7月2日
今日という日が祝日になったようだ…
わらわらと人が集まり、賑やかさが増して行った
のも束の間
フィン「………逃げたね」ぼそ
アスフィがケイトの手を取って、二人きりになるべく去っていった
まあこの場合、永遠にキリがない、このままだと二人きりになれないと悟ったんだろう
その心中やさぞ複雑だろうね…
あれだけまざまざと降臨する様を見せつけられたら…
ンー…まあ放置でいいか
流すことに決めた
妊婦のケイトを気遣いながらも、その手を引いて直走っていくアスフィを――僕は静かに祈りながら見守ることにした(微笑)
どうか…幸多からんことを