第84章 竜の巣
ケイト「……‥
(くす)
…当たり前だろ」微笑
すっ
僕の差し出した右手を、ケイトは左手で優しく包み込むように握り、取ってくれた
複雑な心境が…痛々しい程の悲鳴が、つんざくような声が、聞こえた気がした……
でも…お互いに、声には出さない
大事にしてくれと、願うことしか出来ない……
大事だから………傷付けたくないから…大好きだから…
痛いと思う君を、これ以上見たくは無いから……
ぎゅうっ!
その手を引いて、腕の中に閉じ込めるように抱き締める
ケイト「……」曇り顔のまま俯く
フィン「守るから…!!
絶対に!!」
ケイト「……(じわっ)←涙が目じりにまで溢れる
うん…」俯く
ぽとっ←双眸から一滴のみ落ちる
原初の始祖神と、ケイト…双方が泣いていた
縋り付くように、僕の背を、服を、握り締めた
抱き返さずに…
僕は、滅神と共に、その頭を無理やり自身の胸に押し付けるように、抱き締めることしか出来なかった……
フィン「……」瞑目したままやるせない表情で、強く、強く、抱き締める
ケイト「………」
ありがとうなんて言うだけの身体的余裕は無かった
精神的にも…心にも……
それが垣間見えて…じっとしていられなくなった…と言う方が正しいのだろう
それは皆も同じようで…
すっと、手を差し伸べて、触れるなりしていた
サクラ『あなたがしたことが罪だと言うのなら、私もその罪を背負いたい
その為にいつか罰を受けるならそれでもいい
私はあなたと生きたい』
その想いは…どこでも変わらないものだね……本当に……
痛切なまでに――
抱き締めたまま…離すまいとする僕に、
アスフィは無理強いしたりはせず…優しく受け入れてくれていた
本当に…優しいね……
本当に…
あの時…君は、右手で取ってくれた…
利き手で、利き腕で…
ケイトの場合…本来は利き手も利き腕も左だったから…同じなんだろうね…どちらでも……
『罰を受け入れる覚悟』……
それが、圧倒的に足りなかった…「癌」は……
人を見ないで、省みないで、大事にしないという選択を取っていながら、そんなつもりは無いから、そう扱っていないということにしてくれと、「歪める行為」を強要する、無自覚に…自覚的であれ何であれ、他者に強いている実状は変わらない…そこを一向に改めないからなるんだろう