第14章 遠征
斬っている間の表情は…とても鋭い、刺すような目付きだった。
アイズ「…凄い」
ポツリと口をついてでたのは、唖然としたもの。
驚きと感嘆もまた同時にあった。
真剣な表情で、目を細めながら行っていた。
あの犇めく中を最短かつ安全に駆け抜ける為の通り道を見出す観察力、腐食液の噴出のタイミングを見ただけで察する勘、それと同時に腐食液の内部分の深さを見極めつつ全てを一太刀で斬り裂ける軌道を見極める目と判断力、一瞬で駆け抜けつつその一太刀の動きをもさらに加速させる技量、薄皮一枚のみ残して斬り捨てるだけの絶妙な力加減と繊細さ、それらを全て一瞬で実行に移せるだけの力と速さ。
たった一太刀で、それらが同時に垣間見えた。
私を含めて、その目の前の光景に強く惹かれた。
ケイトがしでかした事柄に、目を丸くして固まっていた。
息をするのも忘れるぐらい…それは、美しかった。
たった一つの攻撃…ただ、それだけなのに……
冒険者になって…長い、はずのに……こんなにも、違う。
私にはできない芸当……
深い感嘆が胸を占める中、私とは違うと否が応でも感じさせられた。
ケイト「破裂するぞ!離れて離れてー!」
穏やかな表情と眼差しに戻って諭しながら促す中、いつものような明るい声が響く。
我に返ったのは、ちょうどその時。
たった…一太刀。
それは、全てを同時に倒す為に繋げた『一筋の軌道』。
腐食液も寄せ付けない、計算され尽くした動き。
たとえ無意識で考えずともできていただろうと、胸の中で囁く声がする。
足元にも及ばない。それほどに熟練されたものだと、強く感じた。
ぎゅううう(拳を強く握り締める)
と同時に、悔しくもあった。
私達の中でも誰もできなかったこと、それを容易くやり遂げる、それも平然とやってのける存在(ケイト)が…妬ましい、羨ましいと叫びそうになる自分が確かにいた。