第82章 光芒(こうぼう)
こちら視点
嫁入りまで誰にも触れられぬよう一室に監禁されたまま、尋ねて知ろうとした
侍従「ああ、お偉方を助けたという殿方?
それはきっと高杉様ですね
高杉の落ち目と呼ばれています」
野山「高杉の…
それが、あの御方のお名前//)
どんな!どんな方でございますか?!」
侍従「腰抜けと揶揄されてございます
お偉方を助けられたのも、戦場を駆け回るしか能がなく、たまたま居合わせただけなのだろうと
首も切り落とせないのだから、武士としては致命的だとも言われております
現に、今までに一度も首をあげられてもおりません
此度の褒美が初めてでございます
あまりおすすめするべき方でもありませんし、特筆すべき点は無いかと――
名家という訳でもありませんし…」
野山「そう…ですか」俯しゅんっ←肩を力無く落とす
侍従「あなた様が人に興味を持つ等、初めてのことでございますね」
野山「えっ
いえ…そうですか?」
侍従「ええ、侍従として仕えて長うございますが
あなた様から聞かれたのは、此度が初めてでございます」
野山「ち、父上には!!」
侍従「言いません^^
そんな差し出がましいことは致しません」
野山「ほっ」
安堵の息をついたのも束の間
侍従「ですが…
心許しませんよう、お気を付けを
もし出会っていたのだとしてもです」
野山「………はい…わかっております」
侍従からすかさず釘を刺され、
途方に暮れた私は、項垂れるしか出来ずにいた…
各々、そんなやり取りがあった――
正能「また…来てもよいか?」
少し…寂しそうな顔で苦しそうに笑い……
触れられぬ手を、僅かに引こうとした
野山「はい//」
すっ
格子に、左手を差し入れられたままの
その手を…迷わず手に取った
左手だけではなく、両手で…優しく、微笑み、撫でながら…
そのまま、自らの右頬に優しく、当てたまま――
野山「お待ちしております
心から」
それに…心底嬉しそうに、やっと笑ってくれた……
そのまま真っ直ぐ見つめ合っていた
微笑みを向けながら、頬を赤らめながら
それから――馬のいななきに促されるように
ヒヒーン!!
「「!!」」ビクッ!!
正能「で、では、また来る」
野山「はい!
また」
ワタワタとしながら、帰路についた
その背を見送りながら…私は笑った